項目別控除:勤務関連経費 Employee Business Expenses


<項目別控除:勤務関連経費 Employee Business Expenses>

給与所得者が勤務活動の一環として雇用主のために支出した経費で、会社からの返済額を超過した金額がその他項目別控除として認められます。ただし、経費の合計額が、調整総所得の2%を超えた部分が実際に控除できる金額です。勤務関連経費として次の経費が挙げられ、フォーム2106に詳細を記入します。

①      出張旅費 ②      交通費 ③      交際費 ④      贈答品費 ⑤      組合費

⑥      職業団体会員費 ⑦      計算機、文房具などの費用 ⑧      専門雑誌、職業新聞購読料

⑨      勤務関係教育費 ⑩      自宅内事務所経費

これらの勤務関連経費は、領収書だけでなく、勤務活動と直接的関係を示す根拠の記録の保管を必要とします。たとえば、交際費を控除するには、まず納税者の直接・間接の仕事に関係する顧客の接待であることを示し、接待の目的、接待された人の氏名とタイトル、日時、場所、領収書などの記録保管義務を果たしていなければなりません。(68)

勤務関連経費は業務遂行上において通常かつ必要な経費に該当することが求められます。

● 「出張旅費」には、航空運賃、タクシー代等の交通費、宿泊費、食費(50%部分は否認)、電話料金、チップ、洗濯代などが含まれます。殆どの場合、精算により会社から費用の返済を受けているため、この種の費用の控除は返済を受けられなかった自己負担分だけとなります。出張中の宿泊費と食事代について、実額方式で控除するかわりに、IRSの定める定額方式を採用して控除することも可能です。

● 「交通費」とは、あくまでも仕事上の経費をいい、通勤費と見なされる支払いは控除が認められません。したがって、会社から支給される通勤手当は、一月245ドル(2013年)の非課税枠の例外を除いて給与と見なされて、会社側には源泉徴収義務があり、従業員側には個人の課税対象所得として申告する義務があります。自分の車を会社の仕事のために使った場合は、車の減価償却費、ガソリン代や保険料などの維持費を按分配賦によって計算した実額を使う方法と、標準マイレッジレート(2013年は1マイル56・5セント)を使う方法とがあります。(69)

● 「交際費」は、50%部分が控除の対象となり、50%部分は否認されます。仕事に関係するレストランでの食事代、ナイトクラブ、観劇、スポーツ観戦などが交際費として考えられます。納税者の直接・間接の仕事に関係する接待であることを示し、接待の目的、接待された人の氏名とタイトル、時間、場所、領収書などの記録保管義務を果たしていなければなりません。

● 「贈答品費」は、顧客などの贈答相手一人につき25ドルまでが控除限度額となっています。たとえば、100ドルのギフトを贈答相手一人に贈った場合、75ドルは否認され、25ドル分だけが控除の対象となります。

● 「組合費」は、アメリカのユニオン会費ばかりでなく、日本人駐在員が日本の本社で加入している組合の会費も含まれます。

● 「職業団体会員費」として、技術者協会、会計士協会、建築家協会、弁護士協会、商工会議賞の年間会員費が考えられます。(70)

● 「器具・備品」は、仕事のために使用したコンピューター、計算機、コピー機、タイプライター、文房具などのことです。このうち私用目的、仕事目的の両方に使われるコンピューター、携帯電話、録音録画機器、車などの特定資産(Listed Property)について、「取得年度の一括損金算入」または「加速度償却」の控除が認められるためには一定条件を満たす必要があります。

● コンピューターの使用を例に挙げると、①会社の便宜のためであること、すなわち雇用主の事業遂行上必要とされ、②従業員の職務維持の条件であること、すなわちコンピューターなしには適切な職務遂行ができず、さらに、③事業目的の使用が50%超であること、の条件を満たした場合に「取得年度の一括損金算入」と「加速度償却」が認められます。私用目的の使用が50%以上の場合は、一括損金算入は認められず、減価償却費は認められるものの、定額法と長期耐用年数の適用により控除の制限を受けます。計算機、コピー機、タイプライターなどの普通資産は、一定条件を満たす必要はありません。(71)

● 「購読料」は、仕事のために必要とした専門雑誌や職業新聞の購読料の控除が認められます。

● 「教育費」は、納税者の現職に関する知識や技能の維持、向上に役立つものだけが控除できます。これには、授業料、教科書代、教材費、交通費が含まれます。卒業後または終業後、新しい職業に就職できるような場合の教育費、例えばロースクールの授業料は控除が認められません。駐在員による英語の勉強のための授業料などは仕事のためであり、控除対象となると考えられます。

● 「自宅内事務所」は、会社の便宜のため従業員が自宅を仕事に使用する場合の経費のことです。自宅の一定部分を占有的・継続的に使用する必要があります。光熱費、保険料、修繕費、減価償却費の事務所への按分配賦額が控除できる額です。

●  以上のほか、会社の要求にしたがって行う健康診断費、ユニフォーム代、仕事用保護ヘルメット、安全靴、安全眼鏡、舞台衣装、オーケストラ団員の燕尾服やタキシード、洗濯代などの費用も控除できます。(72)

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