2018年の控除方式の選択にはご注意ください

納税者は、2種類の控除方式(概算額控除と項目別控除)のうち一方式を選択して税金の計算を行います。

概算額控除(Standard Deduction) は、標準控除、定額控除と翻訳されることもあります。具体的な経費項目をあげずに、一定概算額による控除が認められるという簡便方式です。2018年の控除額は、夫婦合算申告2万4000ドル、特定世帯主1万8000ドル、独身・夫婦個別申告1万2000ドルです。65歳以上の高齢者の場合、既婚者一人1300ドル、独身1600ドルの追加控除が認められます。概算額控除は、経費の証拠書類がなくても一定額の控除が取れるので、いたって便利です。しかし、この控除方式を選択できるのは、アメリカ市民または一年中アメリカに滞在していた居住外国人に限ります。非居住外国人や二重身分の外国人の場合は、概算額控除の採用は認められず、必ず項目別控除を適用しなければなりません。

項目別控除(Itemized Deductions)は、個別控除と呼ばれることもあります。個人消費生活に関わる経費の内、税法上認められているものを項目別に並べて、その合計額を控除する方式です。

トランプ税制の大幅な制限・削減により2018年の控除項目は2017年までと大きく異なることにご注意ください。(703)

項目別控除(Itemized Deductions)が節税になるとは限らない

住宅所有者は、税金計算上貸家住まいと比べて、固定資産税と住宅ローン支払利子の減税効果のある控除が認められて優遇されてきました。ところがトランプ大統領の税制改正が制定され、2018年以降、諸税金控除による優遇措置に歯止めがかかることになりました。諸税金とは、州・市の所得税と固定資産税の合計額をいいますが、諸税金額に対して、1万ドル(既婚者個別申告は5000ドル)の上限額が設定されました。

 納税者は、項目別控除あるいは概算額控除のうち、いずれか有利な控除方式を選択して税金を計算することができます。概算額控除を選択できるのは、米国市民である場合、または、一年中を通じて居住外国人であった場合に限ります。控除の制限が施されたことにより、大概の場合項目別控除の方が有利となるという従来の考え方は改められることになります。

(例)既婚者Aさんは、控除方式として概算額控除(2018年2万ドル)と項目別控除のどちらを選択したら有利となるか計算します。A さんは、固定資産税1万5000ドル、州・市所得税1万ドル、住宅ローン支払利子9000ドルを支出したとします。2017年までは、諸税金の合計額2万5000ドルと支払利子9000ドルの総合計3万4000ドルが項目別控除として認められていました。2018年以降は、諸税金控除の上限額が1万ドルに抑えられ、その額に住宅ローン支払利子9000ドルを加えた1万9000ドルが項目別控除額となります。Aさんは、控除方式として項目別控除(1万9000ドル)ではなく概算額控除(2万ドル)を選択することにより節税となり、有利となります。(702)

 

勤務関連経費控除の撤廃

給与所得者が勤務活動の一環として雇用主のために支出した経費で会社からの返済額を超過した金額がその他の項目別控除として認められてきました。当控除は、2018年以降全面的に廃止となります。

経費の合計額が、調整総所得の2%を超えた部分が実際に控除できる金額でした。勤務関連経費として次の経費が挙げられます。出張旅費、交通費、組合費、職業団体会員費、計算機、文房具、コンピューター、

専門雑誌、職業新聞購読料、勤務関係教育費、自宅内事務所経費。フォーム2106(Employee Business Expenses)に詳細金額を記入し、申告書フォーム1040に添付提出します。調整総所得の2%を超える部分

について控除が認められていた項目別控除には、勤務関連経費のほかに、投資関連経費その他控除として以下の費用があります。投資顧問料、投資弁護士費用、投資管理手数料、投資相談料、セーフ・ディポジット・ボックス、税務申告書作成手数料、税務相談料、税務調査立会手数料。また、2%足切制限の対象とならない控除として、ギャンブル損失、故人の課税対象所得に係る遺産税がありました。2017年まで認められていた上記控除は、すべて廃止となりました。(667)

ギャンブル所得

宝くじ、ラッフル、競馬、ルーレット、スロットマシーン、トランプ、麻雀などの賭けに当たって取得した「ギャンブル所得」は、所得税法上、課税対象となり、確定申告をしなければなりません。フォーム1040の「その他所得」の欄で報告します。給与、利子、配当などの他の所得と合算されて、通常の連邦所得税率(10%から39.6%までの7段階の累進税率)、および、居住している州の税率が適用となります。

所得に対応する「ギャンブル損失」は控除が認められ、項目別控除スケジュールAの「その他の控除」の(調整総所得の2%の「足切り制限」対象とはならない)欄で報告します。損失として控除が認められるのは、所得の金額までであり、宝くじのはずれ券、ラッフル購入代金、競馬の負け券など、賭けごとを行う際に費やした賭け金を含む直接経費で、同一年度内のあらゆる支出の合計額です。「ギャンブル損失」は項目別控除方式を選択した場合にのみ控除が認められ、概算額控除方式を採用した場合は控除できません。損失が所得よりも多いため控除が認められなかった金額は、翌年に繰り越されず控除の権利を失います。

 賭け金(元金)の支払いを必要としない懸賞の申込みを行い、抽選などによって当選して賞金を獲得した場合、賞金は課税対象になりますが、控除は一切認められません。福引き、ドア・プライズ、商品購入義務のないくじ引きなどに参加して賞金を手に入れた場合も課税対象となり、元金の支出がないため控除は認められません。(626)

自宅内事務所の控除

自宅の一部を仕事に使っている場合、自宅内事務所の費用について所得からの控除が認められます。自営業者は、事業所得算出上の必要経費として、また、給与所得者は、勤務活動上の必要経費としての取扱いです。自宅内事務所の経費として、固定資産税や住宅ローン支払利子、水道光熱費、火災保険料、修繕費、減価償却費、維持管理費、賃借料(貸家住まいの場合)などが含まれます。経費合計額を、自宅内事務所の面積が自宅総面積(台所、洗面所、押入れ等を除く)に占める割合で按分配賦した金額が控除額です。

自宅内事務所の経費は、フォーム8829にその詳細を記入して申告します。控除が認められるための条件として、①占有的・恒常的使用、および、②雇用主の便宜があります(IRC(内国歳入法)第280A条)。「占有的使用」とは、住居の一定空間を事業用に占有使用していることを言います。事業用と個人生活用に併用している場合は、占有使用ではないため否認されます。「恒常的使用」とは、住居の一定空間を事業用に常時使用していることを言います。偶発的・臨時的な使用だけの場合は、恒常的使用ではないため否認されます。「雇用主の便宜」とは、従業員の場合にのみ適用となり、自営業には適用されない条件です。自宅使用が雇用主の便宜上役立つため、雇用主の要請に基づいて自宅を仕事に使用する場合に控除が認められます。単に自宅使用が勤務遂行上便利で役立つという理由だけでは、「雇用主の便宜」が欠けているため
控除は認められません。(625)

 

勤務関連経費の控除

給与所得者が勤務活動の一環として会社のために支出した経費は、会社からの返済額を超過した金額がその他の項目別控除として所得控除が認められます。ただし、経費の合計額が、調整総所得の2%を超えた部分が実際に控除できる金額です。フォーム2106に項目と金額を記入し、フォーム1040に添付提出します。

勤務関連経費の代表例は以下の通りです。出張旅費、贈答品費、接待費、交通費、組合費、職業団体会員費、キャルキュレーター、コンピューター、携帯電話、文房具、消耗品費、専門雑誌・職業新聞購読料、勤務関連教育費、自宅内事務所経費。

調整総所得の2%を超える部分について控除が認められる費用には、勤務関連経費のほかに、投資関連経費その他があります。代表例は、投資顧問料、投資管理手数料、投資弁護士費用、投資相談料、税務相談料、セーフディポジット・ボックス、税務申告書作成手数料、税務調査立合手数料。

経費の領収書だけでなく、勤務活動や投資活動と直接的な関係を示す根拠の記録の保管を必要とします。たとえば、接待費を控除するには、まず納税者の直接・間接の仕事に関係する顧客の接待であることを示し、接待の目的、接待された人の氏名とタイトル、日時、場所、領収書などの記録保管義務を果たしていなければなりません。(624)

 

災害損失の証拠

災害および盗難の損失は突然の破壊・窃盗の結果でなければならないため、忘れ物、落し物は災害や盗難とは見なされず控除できません。大統領によって災害地域(Disaster Area)の指定が宣言されると、発生年度の前年に損失控除を申告して、還付を受けることができます。

災害盗難損失はフォーム4684に明細を記入して、申告書に添付して提出します。記入事項は、財産の種類、取得日、取得費、保険還付額、災害前の時価、災害後の時価などです。損失の評価額は、財産を失った場合は、取得費または時価のいずれか低い方の金額を採り、自動車事故や嵐による家屋損壊など、修繕を必要とする損害を被った場合は、修繕費を採ります。

損失の証拠書類は申告書に添付提出せず、将来税務当局からの提出要求に備えて手元に保管しておきます。災害を被る前の状況を示す写真、損失状況を示す写真、災害の報道記事、警察署への被害届、消防署の報告書、購入時の領収書、保険会社へのレポート、修繕費の領収書、鑑定士、建築家などの専門家の鑑定書が証拠書類の例です。(623)

災害盗難損失控除

個人の所有財産、例えば住居、家具、車、宝石、現金などを災害によって失ったり、物件の価値を著しく損ねたり、あるいは盗難によって失ったりした場合、項目別控除の一つである「災害盗難損失控除」が認められます。控除方式を項目別控除方式を採用して税金計算を行う場合だけにこの控除が取れます。概算額控除(スタンダード・ディダクション)方式を採用すると災害盗難損失は控除できないのです。

控除の対象となる金額は、まず保険による補填額を除き、災害1件につき$100を超える部分を把握します。さらに損失の合計額が調整総所得の10%を超えた部分が控除の金額です。損失合計額が10%の「足切り制限」以下の場合、控除は一切認められないため、損失が多額でない限り控除の対象となりません。災害や盗難が頻繁に生じることもないので、見かけることの少ない控除です。

災害とは、ハリケーン、台風、暴風雨、竜巻、洪水、地震、津波、地すべりなどの自然現象、火災、自動車事故、暴動、動乱、またはテロ行為などによる破壊を指します。災害は、突然で、予期不能な、常軌を逸した破壊力によって生じたものでなければならず、家屋の侵食、腐食、シロアリ浸食のように、自然的に一定期間を経て生じた損害は控除の対象となりません。(622)

慈善寄付控除

慈善寄付は、項目別控除の一つとして控除が認められます。納税者の所得レベルに適用される税率を寄付に掛けた金額が戻ってくる額であり、寄付の金額よりも常に少なくなります。例えば、実効税率35%の納税者が1000ドルを寄付すると、350ドルの税金還付となります。寄付の金額と同額の税金が還付されると考えるのは誤解です。控除が認められるためには、IRS(内国歳入庁)からチャリタブル・オーガニゼーション(非営利慈善団体)の認可を受けている米国の組織への寄付でなければなりません。

寄付の金額が250ドル未満の場合、慈善団体からの領収書、または、支払済小切手が証拠となります。250ドル以上の寄付は、支払いを証明する書面による確認状を慈善団体から取得しておかなければなりません。この場合、支払済小切手だけでは寄付の証拠として不十分です。品物や入場券などの見返りが寄付に含まれているのであれば、控除額はその分削減されます。75ドル超の寄付で、品物や、入場券などの見返りが含まれている場合は、見返りの価値を明記した確認状を慈善団体から受け取っておく必要があります。現金の寄付のほかに、現物による寄付も控除が認められます。現物による寄付は、その種類によって評価方法が異なります。(619)

子女世話費税額控除

仕事に出ている間、子供の面倒を見てもらうために費やしたベビーシッター代、デイケア代、ナーサリー保育園・託児所代等は、税金計算上税額控除による税金削減の形で費用の一部が納税者に還元されます。給与や自営業事業所得などの勤労所得があり、12歳以下の扶養家族、あるいは、年齢に関係なく要介護の障害者や高齢者などのための世話費の支出を必要としている独身・既婚の納税者が該当します。さらに既婚者は、配偶者がフルタイム学生である場合に世話費税額控除が認められます。

収入レベルに応じて所得金額の20%ないし35%分が税額控除となり、最高2,100ドルの税金削減が得られます。総所得が増えるにしたがって適用率が段階的に下がる仕組みとなっていて、低所得者に対してより有利な計算になるようになっています。支払先の氏名や組織名、住所、ID番号をフォーム2441に報告する義務があります。ソーシャル・セキュリティー番号やITIN納税者番号を持っていないベビーシッターに子供の面倒を見てもらっている場合、申告書に必要事項を記入することがでできず、世話費税額控除は認められないことを意味します。(564)

 

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