双方居住者と外国税額控除 Dual Resident and Foreign Tax Credit

<双方居住者と外国税額控除 Dual Resident and Foreign Tax Credit>

 米国の永住権保持者が永住権を放棄せずに日本に住んでいる場合、税法上、日本の居住者であると同時に米国でも居住者となります。同一人物が二つの国で居住者に該当することを双方居住者(Dual Resident)と呼びます。日米両国とも、居住者は毎年全世界所得を報告して確定申告をする義務があります。日本に帰国後、永住権保持者の収入は日本だけであり、米国では収入がないため連邦税の申告はしなくてもいいと考えるのは正しくありません。

 既に一方の国で課税された所得を再び他方の国で申告する際、必ず二重課税が発生するとは限りません。それは税法上、二重課税防止措置が海外在住者に与えられているためです。二重課税防止措置とは、「海外役務所得控除」と「外国税額控除」を指します。「海外役務所得控除」は一律9万5100ドル〈2012年〉を所得控除の形で非課税扱いとする規定です。「外国税額控除」は一方の国で既に課税された所得を他方の国で再度報告することによって生じる税金から税額控除の形で合理的な枠の範囲内で課税免除にする規定です。双方の国の源泉所得に所得税が課せらた場合、それぞれの相手国で外国税額控除を適用することによる減税が可能です。(383)

永住権保持者の贈与税・遺産税 Permanent Resident and Gift/Estate Tax

<永住権保持者の贈与税・遺産税 Permanent Resident and Gift/Estate Tax>

 永住権(グリーンカード)保持者は、所得税法上、米国居住者として米国市民と同等の扱いを受け、全世界所得が課税の対象となることは周知の通りです。永住権を保持していると自動的に「居住者」となるのは所得税の取り扱いであり、贈与税・遺産税では永住権保持者が米国市民と同等の扱いを受けるとは限りません。贈与税・遺産税法上、Domicile (定住地) と呼ばれる、所得税とは異なる「居住者」の定義が適用されるためです。定住地とは、本人がいずれは戻って来ると考えている故郷のような場所のことで、それが米国内にあれば「居住者」、米国外にあれば「非居住者」となります。そのため、ビザで米国に滞在する全ての外国人および多くの永住権保持者は、贈与税・遺産税法上非居住外国人と判定されます。

非居住外国人と判定される永住権保持者は、連邦遺産税の基礎控除額として6万ドルだけが認められ、米国市民に適用される534万ドル(2014年)の非課税額は認められません。同様に、連邦贈与税の基礎控除額として受贈者一人当たり1万4000ドルだけが認められ、米国市民に適用される534万ドル(2014年)の生涯非課税贈与額は認められません。非居住外国人は、贈与税・遺産税の基礎控除額が大幅に制限される一方、課税対象となる贈与・遺産として米国内資産だけが含まれることとなっています。居住者・非居住者の税法上の身分と非課税枠との関係や財産の所在国などについて事前に計画することによる贈与税・相続税の合法的な節税が勧められます。また、日米贈与相続税条約を適用することによる節税も考慮する必要があります。(303)

非居住者として扱われるビザ   Visas Treated as Nonresident

<非居住者として扱われるビザ   Visas Treated as Nonresident>

 Aビザ、Gビザ、Fビザ、Jビザ、Mビザ、Qビザ保持者は、滞在日数が183日を超えても居住者としてではなく、通常、非居住者として扱われます。Aビザ (外交官) およびGビザ(国際機関職員) の場合、年数に制限なくどんなに長い間米国に滞在していても、たえず非居住者となります。日本政府や国際機関から支給される報酬は非課税(内国歳入法第893条)、関連報酬以外のその他の所得は課税対象となります。

 F(学生)、J(交流訪問者)、M(専門学校学生)、Q(交換訪問者)のビザで学生としてアメリカに滞在する場合は、入国から5年間については非居住者として扱われ、5年経過後には183日を基準とする「実質的滞在条件」が適用されて、非居住者あるいは居住者となります。またJビザ、Qビザによる教授または研究者は、入国から2年間について非居住者として扱われ、それ以降は「実質的滞在条件」が適用されます。(286)

租税条約適用のための居住者証明  Certificate of Residence

<租税条約適用のための居住者証明  Certificate of Residence>

利子や配当、年金、ロイヤルティー、離婚扶助料などの海外送金は源泉徴収税の対象となります。国内法の税率は日本20%、米国30%ですが、日米租税条約を適用すると0%、5%、10%などの低減税率になります。

日本から米国の納税者に対して利子や配当、年金などを支払う際、日米租税条約による低減税率の適用を受けるためには、日本の支払者は国税当局に「租税条約に関する届出書」を提出しなければなりません。届出書にはIRSから米国の納税者に発行された居住者証明書を添付します。日本と米国以外の国の居住者による租税条約の濫用を防止し、一定の基準を満たした適格居住者だけが恩典を受けられるようにするためです。確定申告書を提出していない場合は、原則として居住者証明書は発行されず、従って租税条約による税の減免措置は受けられません。申請書フォーム8802に、申請者氏名、住所、納税者番号、個人・法人の別、提出した申告書の種類、証明書の目的、証明書の枚数、申請者の署名を記入し、35ドル~80ドルの申請料小切手を添付して、IRSの所定提出先へ郵送提出すると、6週間以内に居住者(納税申告)証明書(フォーム6166)が送られてきます。

米国から利子や配当、年金などを受け取る日本居住者が租税条約による米国源泉徴収税の減免措置を受けるために必要とする日本の「条約届出書」に相当するのが、米国のフォームW-8BEN というIRS様式です。日本の場合と異なり、フォームW-8BENはIRSへ提出せず、支払いを行う米国居住者や米国法人が保管します。(269)

双方居住者②  Dual Resident and Treaty

<双方居住者②  Dual Resident and Treaty>

日本の居住者が米国でも居住者と判定された場合、新日米租税条約第4条第3項の双方居住者の振り分け基準によって居住国を一国に決めることができます。居住形態に関する5つの基準が規定されています。

①      恒久的住居の有無――商用、観光など一時的滞在目的でなく、本人、家族が継続的に居住する住居が所在する国の居住者と判定。

②      重要な利害関係の中心の有無――家族、職業、政治的・文化的活動の場所、本人の事業・勤務の行われる場所、主な資産の所在する国に居住性があると判定。

③      常用の住居の有無――頻繁に起居する一定の寝食の場所または常用の宿泊所のある国の居住者と判定。

④      国籍の有無――本人が国籍を有する国の居住者と判定。

⑤      両国の協議――二重国籍者である場合、日米両国の税務当局間の協議によりどちらか一方の国の居住者とする。

当条項の適用により、出張での往来で日本人の米国滞在日数が183日を超えても、米国で非居住外国人として申告することができます。フォーム8833に日米租税条約第4条を適用した旨開示する義務があります。(103)

双方居住者①  Dual Resident

<双方居住者①  Dual Resident>

 税法上、日本の居住者であり、同時にアメリカの税法上もアメリカの居住者になる場合があります。このように同一人物が日本とアメリカの両国において居住者に該当することを双方居住者(Dual Resident)と呼びます。例えば、日本の会社に籍を置いたまま日本の居住者として出張の形で日本とアメリカを往復していてアメリカ滞在日数が多くなり、「実質的滞在日数」の計算上183日を超えるためアメリカの居住者となる場合です。

住民票、家族、家、住所、勤務する会社、納税先、活動サークル所属先が日本にあって、本人は日本の居住者でありながら、アメリカの税法規定によってアメリカでも居住者と判定されて双方居住者となる場合、二重課税にならない妥当な税金上の取り扱いについて検討する必要があります。

双方居住者として何ら解決策を講じなければ、日米両国とも居住者として申告して双方とも全世界所得を報告し、納税することになります。この方法では、外国税額控除による救済を受けるものものの、二重課税の完全な排除は達成されません。(102)

渡米年度の居住者選択 Election Treated as Resident Alien

<渡米年度の居住者選択 Election Treated as Resident Alien>

赴任などの目的で最初に渡米した年度は、滞在日数の合計が183日未満となる場合であっても選択により居住者として申告することができます。この選択をするためには、次の3条件を同時に満たす必要があります。

(1)         当該年度の滞在日数が連続で31日以上であること。

(2)         滞在日数が連続31日滞在期間の初日から12月31日までの合計日数の75%以上であること。

(3)         米国入国年の翌年に実質的滞在条件を満たして居住者となること。

すなわち、7月3日以降に入国したため、その年度の滞在日数は183日未満であっても、選択によって入国日以降の期間について居住者として申告することができます。ただしその場合、条件(3)の「翌年に実質的滞在条件を満たして居住者となること」が必要であり、確定申告の提出期限である翌年の4月15日までにその条件を満たすことができない場合には、通常、提出期限の延長をすることになります。また、既婚者は、さらに1月1日に遡って居住者の選択を行い、夫婦合算申告行うことによって節税することも可能です。(101)

実質的滞在条件の例外 Physical Presence Test Exception

<実質的滞在条件の例外 Physical Presence Test Exception >

 アメリカ滞在の日数計算で183日を超えて実質的滞在条件を満たしても、次の二つに当てはまる場合は非居住者として扱われます。

(1)   特定のビザ保持者の場合

A (外交官)、G(国際機関)、F (学生)、J (交流訪問者)、M (専門学校学生)、Q (交換訪問者) の各ビザ保持者は、滞在日数に関係なく非居住者となります。ただし、F、J、M、Qビザで学生の場合は、入国から5年間についてだけ非居住者として扱われます。またJビザ、Qビザで教授または研究者の場合は、入国から2年間についてだけ非居住者として扱われます。5年/2年経過後は「実質的滞在条件」が適用されて、非居住者あるいは居住者となります。

 (2)  外国と密接な関連(Closer Connection)がある場合

実質的滞在条件の日数計算上は居住者となるものの、当該年度の滞在日数が183日未満であり、米国よりもむしろ外国の方が経済上、生活上の関連が深く、仕事や住居も一年を通じて外国にある場合、非居住者となります。(100)

実質的滞在条件 Substantial Presence Test

<実質的滞在条件 Substantial Presence Test>

Eビザ(条約商人・投資家)、Lビザ(派遣管理職)、Hビザ(一時就労者)、Iビザ(報道機関)、Bビザ(商用・観光)、Kビザ(婚約者)、Oビザ(特殊技能者)、Pビザ(芸能人・スポーツ選手)、Rビザ(宗教関係者)等の保持者は、「実質的滞在条件」が適用されて、滞在期間の長短によって居住者あるいは非居住者となります。「実質的滞在条件」とは、次の2条件を指します。

(1)当該年度中の滞在日数が累計で31日以上あること。

(2)当該年度の滞在日数、前年度の滞在日数の3分の1、および前々年度の6分の1の合計が183日以上であること。

従って、一年中米国に滞在した年は一年を通じて居住者となります。赴任などで渡米してきた年、帰任などで米国から離れた年は、上記の計算により実質滞在日数が183日以上であれば、米国滞在期間は居住者、国外期間は非居住者となります。このように同一年度に二つの身分を有することを「二重身分」(Dual Status)と呼びます。

なお、州税の居住者・非居住者の判定は、連邦税の居住者・非居住者に関係なく、州独自の基準に基づくため、連邦では非居住者、州では居住者となることがあります。(99)

居住者・非居住者

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