非課税住居売却益と使用目的条件

 

主たる住居の売却益(譲渡益)について、独身25万ドル、夫婦合算申告50万ドルの非課税措置の恩恵を受けるためには、①2年間の所有条件、②2年間の居住条件、③使用目的条件を同時に満たす必要があります。①所有条件は納税者が住居の所有権を有すること、②居住条件は主たる住居として納税者が実際に日常的にその家に住んでいること、③使用目的条件は、主たる住居としての適格使用をいいます。非適格使用があった場合は、25万ドル・50万ドルの非課税額は制限されて満額認められず課税されます。非適格使用とは、主たる住居使用以外の休暇や賃貸目的使用のことを指します。

(例)独身Aさんは、2017年1月1日に30万ドルで住居を購入して、賃貸(非適格使用)のために3年間使用しました。2020年1月1日、その家に移り住み「主たる住居」(適格使用)として2年間使用しました。2022年1月1日、その住居を60万ドルで売却し、30万ドルの譲渡益をを得ましたが、2年間の「所有条件」および「居住条件」を満たしてはいるものの、所有していた5年間のうち3年間は主たる住居以外の非適格使用であるため、譲渡益のうち18万ドル(60%)は課税対象の譲渡益となり、残りの12万ドル(40%)だけが非課税扱いとなります。 (712)

 

住居売却益の課税

主たる住居を売って得た売却益のうち、独身25万ドル、夫婦合算申告50万ドルについて非課税扱いにすることができます。住居売却益非課税措置の恩恵を受けるためには、所有条件、居住条件、適格使用条件を満たす必要があります。所有条件とは納税者が売却前の5年のうち2年間以上、納税者が住居の所有権を有していて、登記上の名義が一致していることをいいます。居住条件とは主たる住居として実際に日常的に2年以上本人がその家に住んでいたことを指します。適格使用条件とは過去の使用目的が、主たる居住としての適格使用だけであれば問題ありませんが、賃貸活動などの住居以外の非適格使用があった場合は、すなわち使用目的条件を満たさない場合は、25万ドル/50万ドルの非課税額は制限されて満額が認められず、一部否認されます。

例えば、独身者が2015年に30万ドルで住居を購入して、賃貸(非適格使用)のために3年間使用した後2018年にその家に移り住み「主たる住居」(適格使用)として2年間使用したとします。2020年12月31日、その住居を55万ドルで売却し、25万ドルのキャピタル・ゲイン(譲渡益)を得たと仮定します。2年間の「所有条件」および「居住条件」を満たしてはいるものの、2015年から2018年の賃貸使用の3年間(60%)は主たる住居以外の非適格使用であるため、その期間に対応する譲渡益は課税対象となります。25万ドルの譲渡益のうち15万ドル(60%)は課税対象の譲渡益となり、残りの10万ドル(40%)だけが非課税扱いです。(681)

 

主たる住居と節税

納税者が所有し、日常の生活に使用している住居のことを主たる住居(プリンシパル・レジデンス)と呼びます。この主たる住居は、税法上特別な意味を持っています。まず、支払利子の控除が認められるためには、主たる住居、および、他のもう一軒(セカンド・レジデンス)、合計二軒分の住宅ローンに限られます。控除の条件として、住宅ローンの借入上限額が百万ドルまでであること、そして、住宅を担保に供したモーゲッジ融資ローンであること、という条件を満たす必要があります。持ち家のある人はさらに、不動産に課せられる固定資産税の控除も認められます。固定資産税は、住宅ローンの支払利子が主たる住居とセカンド・レジデンスの二軒分だけに限られるのと異なり、三軒目以上の住居分についても控除が認められます。住宅ローン支払利子と固定資産税の控除は、持ち家のある納税者にとって節税を達成するための重要な控除項目です。

主たる住居は、住居売却益の非課税措置の適用を受けるための決定条件としても重要です。住居を売却して得たキャピタル・ゲイン(譲渡益)は、夫婦合算申告50万ドル、独身25万ドルが非課税(免税)扱いとなることは周知の通りです。当免税措置の適用を受けるには、売却前の5年間のうち2年間、納税者が住居の所有権を有していたこと(所有条件)、そして主たる住居として納税者が実際に日常的にその家に住んでいたこと(居住条件)という2条件を満たす必要があります。このように、「主たる住居」は節税と深くつながりがあることがわかります。(615)

 

 

帰国と米国住居売却のタイミング

帰国に際してそれまで住んでいた住居を売る場合の税金問題について検討します。売却前5年間のうち2年間、納税者が所有権を有し、日常の生活に使用してきた主たる住居(プリンしパル・レジデンス)を売却して得た売却益のうち、一定金額までが非課税(免税)扱いになることは周知のとおりです。一定金額とは、独身者25万ドル、既婚者で夫婦合算申告50万ドルです。25万ドル/50万ドルの非課税枠を超える売却益がある場合は、超過額が連邦税(2016年現在23.8%)、および、州所得税の対象となります。所有条件と居住条件さえ満たせば、非課税枠は非居住外国人にも適用となります。

米国に滞在していた日本人が所有していた住居売却のタイミングが、日本帰国後、すなわち日本の居住者となった後の場合、住居売却益は米国と日本の双方で課税対象となるため、両国で確定申告することになります。25万ドル/50万ドルの非課税枠は、あくまでも米国の連邦税と州税の計算上適用される規定であり、日本の所得税の計算には適用されません。米国での節税分が日本の税金計算上の外国税額控除の減額となります。結局は住居売却益の全額が日本で課税を受け、せっかくの非課税枠の活用ができなくなります。以上から、帰国の際の住居売却の時期には注意を払う必要があります。(604)

使用目的条件と住居売却益の課税

主たる住居の売却益(譲渡益)について、独身25万ドル、夫婦合算申告50万ドルの非課税措置の恩恵を受けるためには、所有条件と居住条件の2条件を同時に満たす必要があります。所有条件とは納税者が売却前の2年間以上、納税者が住居の所有権を有していたことであり、居住条件とは主たる住居として実際に日常的に2年以上その家に住んでいたことを指します。過去の使用目的が、主たる居住としての適格使用だけであれば問題ありませんが、賃貸活動などの住居以外の非適格使用があった場合は、すなわち使用目的条件を満たさない場合は、25万ドル/50万ドルの非課税額は制限されて満額が認められず、一部否認されます。

(例)独身Aさんは、2011年に30万ドルで住居を購入して、賃貸(非適格使用)のために3年間使用した後2014年にその家に移り住み「主たる住居」(適格使用)として2年間使用した。2015年12月31日、その住居を55万ドルで売却し、25万ドルのキャピタル・ゲイン(譲渡益)を得た。Aさんは2年間の「所有条件」および「居住条件」を満たしてはいるものの、2011年から2013年の賃貸使用の3年間(60%)は主たる住居以外の非適格使用であるため、その期間に対応する譲渡益は課税対象となる。25万ドルの譲渡益のうち15万ドル(60%)は課税対象の譲渡益となり、残りの10万ドル(40%)だけが非課税扱いとなる。(603)

固定資産税の控除

固定資産税は、住宅ローン支払利子と並んで持ち家のある人にとって所得控除が認められる貴重な項目です。住宅ローン支払利子の場合は、納税者が所有する主たる住居、および他の1軒(セカンド・レジデンス)の合計2軒分についてだけが控除の対象となるという制限付きですが、固定資産税控除にはそのような制限がないため、3軒以上の住宅についても、また土地だけ所有していて支払う固定資産税についても、控除が認められます。外国(日本)に所有する不動産の固定資産税も控除できます。

ローンにたよらず現金でアメリカの住宅を購入した場合の固定資産税控除額は、郡(カウンティー)や市町村などの地方自治体政府から直接送られてくる請求書に基づいて、1月1日から12月31日までの間に実際に支払われた金額です。地方自治体の財源であるため、カウンティー・タックス、シティー・タックス、タウン・タックス、ビレッジ・タックスなどと呼ばれている場合も、また義務教育制度の資金を支えるスクール・タックスも固定資産税として控除できます。(599)

持ち家と節税

米国で住宅を購入すると「住宅減税」の作用により税金上有利となります。住宅所有者が支払う固定資産税と住宅ローン支払利子について、個人所得税の計算上、控除が認められるからです。住宅に関連した控除が全く認められないアパート・貸家住まいと比べると、持ち家があれば節税分だけ得をするわけです。

持ち家はどのくらい得になるのでしょうか。仮にレント(家賃)を毎月2000ドル払っていた人が、住宅ローンを借りて住宅(戸建てやコンド、コープなど)を購入したとします。住宅取得後、住宅ローンの返済額1600ドル、固定資産税400ドル、合計毎月2000ドル、すなわちレントの時代と同額の住居費を支出します。毎月支払う住宅ローン1600ドルのうち1500ドルが控除可能な支払利子であり、所得税の実効税率25%と仮定すると、支払利子である1500ドルと固定資産税である400ドル、合計1900ドルが所得控除できるため、毎月475ドル(1900 x 25% = 475)の減税効果があります。毎月475ドルの税金をセーブするため、住居費としての支出額は2000ドルから1525ドルに減少し実益が生み出されます。もちろん、住宅購入決定のためには住宅ローンを借りるための頭金を用意することや、頭金を他の投資に費やした際に生じる逸失金利についても考慮しなければなりません。(598)

主たる住居の意味

納税者が所有し、日常の生活に利用している住居のことを主たる住居(プリンシパル・レジデンス)と呼びます。主たる住居は税法上特別な意味を持ちます。支払利子の控除が認められるためには、主たる住居、および、他のもう一軒(セカンド・レジデンス)、合計二軒分の住宅ローンに限られます。控除の条件として、住宅ローンの借入上限額が百万ドルまでであること、そして、住宅を担保に供したモーゲッジ融資ローンであること、という条件を満たす必要があります。持ち家のある人はさらに、不動産に課せられる固定資産税の控除も認められます。固定資産税は、住宅ローンの支払利子が主たる住居とセカンド・レジデンスの二軒分だけに限られるのとは異なり、三軒目以上の住居分も控除が認められます。住宅ローン支払利子と固定資産税の控除は、非居住外国人の項目別控除として認められません。

主たる住居であることが税法上の決定条件として求められるのが、住居売却益の非課税措置の適用を受ける場合です。住居を売却して得たキャピタル・ゲイン(譲渡益)は、夫婦合算申告50万ドル、独身25万ドルが非課税(免税)扱いとなることは周知の通りです。当非課税措置の適用を受けるには、売却前の5年間のうち2年間、納税者が住居の所有権を有し(所有条件)、主たる住居として納税者が実際に日常的にその家に住んでいたこと(居住条件)という2条件を満たす必要があります。(519)

 

不動産譲渡にかかる源泉税の精算

非居住外国人が米国内に所有している不動産を売却する際、買い手は売却価格の10%の源泉税を差し引いてIRS(内国歳入庁)へ納付する義務があります。主たる住居の譲渡益のうち25万ドルまでが非課税扱いとなる場合や、売却価格が取得費よりも低いため売却損になる場合であっても、売り手がIRSから源泉税の免除を認可する証明書の発行を受けない限り、10%源泉税を回避することはできません。源泉税免除の証明書の発行を受けるためには、事前に申請書フォーム8288-Bと免除の根拠を示す書類をIRSに提出する必要があります。州によっては、州外居住者による不動産売却に対して、源泉徴収または予定納税による納税を必要とする場合があります。

不動産の売却価格が30万ドル以下であり、購入者がその物件を今後自分の日常的な住まいとして取得する場合には、10%源泉税の対象とはなりません。

10%源泉税は最終的な税金ではなく、売り手は年明けの提出期限までに確定申告書フォーム1040NR を提出して、税金の清算をする義務があります。確定申告書に譲渡損益計算書と源泉徴収票フォーム8288-Aを添付して、税金の還付を受けるか、あるいは、追加の支払いをすることになります。米国不動産の譲渡益は、日本でも課税対象になります。米国で支払った税金について日本で外国税額控除を受けられるのは、10%源泉税ではなく、清算後の最終税額です。(500)

帰国と米国住居売却のタイミング

帰国に際してそれまで住んでいた主たる住居を売る場合の税金問題について検討します。売却前5年間のうち2年間、納税者が所有権を有し、日常の生活に使用してきた主たる住居(プリンしパル・レジデンス)を売却して得た売却益のうち、一定金額までが非課税(免税)扱いとなることは周知のとおりです。一定金額とは、独身者25万ドル、既婚者で夫婦合算申告50万ドルです。非課税枠を超える売却益がある場合は、超過額が連邦税(2014年現在20%)、および、州所得税の対象となります。所有条件と居住条件さえ満たせば、非課税枠は非居住外国人にも適用となります。

 

米国に滞在していた日本人が所有していた住居売却のタイミングが、日本帰国後すなわち、日本の居住者となった後の場合、住居売却益は米国と日本の双方で課税対象となるため、両国で確定申告することになります。25万ドル・50万ドルの非課税枠は、あくまでも米国の連邦税と州税の計算上適用される規定であり、日本の所得税の計算には適用されません。米国での節税分が日本の税金計算上の外国税額控除の減額となります。結局は住居売却益の全額が日本で課税を受け、せっかくの非課税枠を活用できなくなり増額となります。以上から、帰国の際の住居売却の時期には注意を払う必要があります。(496)

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