738宗教活動家Rビザと税金  

Rビザの米国移民法上の定義は、宗教的な立場で活動することを目的として一時的に米国に入国・滞在する個人のためのビザとなっています。宗教活動家とは、正規の非営利宗教組織として認められた宗教団体の一員であり、例えば宗教的礼拝を行うことを公認された職務を果たす人をいいます。申請者は少なくとも学士号もしくは同等の学位、あるいは宗教専門職を務めるために必要な学位を有していることが求められます。

183日を基準とした米国滞在日数よりも長いか短いかによって居住者あるいは非居住者になります。着任年度と離任年度に滞在日数が少ないため非居住者になる場合がある以外、居住者とされて米国市民同様、全世界所得を申告して納税する義務があります。既に一度アメリカ以外の国で税金の対象となった所得を報告Rビザ保持者は、Eビザ、Lビザなど他の多くのビザ保持者同様、税法上「実質的滞在条件」が適用され、することにより二重課税が生じることになります。その場合は外国税額控除の適用によって二重課税の回避が達成できます。居住者は全世界所得が課税対象になり、項目別控除または概算額控除のどちらか有利な控除方式を選択して税金計算ができます。非居住者は米国源泉所得だけが課税対象になって、必ず項目別控除方式を適用して税金計算をしなければなりません。(738)

国際文化交流訪問者Qビザと税金

Qビザは、自国の歴史、文化、伝統を普及するために国際的文化交流プログラムに参加する人のためのビザです。Qビザ保持者は、連邦所得税法上の居住外国人・非居住外国人の判定基準である「実質的滞在条件」からの除外個人とされています。除外個人であるということは年度内の米国滞在日数が183日を超えても、非居住外国人であることを意味します。

Qビザ保持者は、たとえ課税対象となる所得がなくても「実質的滞在条件」からの除外個人である旨を身分情報申告書フォーム8843に記入して、毎年IRSへ提出する義務があります。フォーム8843には、Qビザ保持者の氏名、日本留守宅住所、ビザの発行日、パスポート番号、過去3年間のアメリカ滞在日数所、所属組織の名称住・住所・電話番号、担当責任者の氏名・住所・電話番号、過去6年間の保有ビザの種類などについてのインフォーメーション記入します。

居住外国人と非居住外国人とでは、税金の取り扱いの違いの結果、どちらが有利になるか一概には言えません。所得で比べると、居住外国人は全世界の年間全所得の申告を必要とするのに対して、非居住外国人の場合は米国源泉所得だけを申告すればいいことになっています。例えば、日本の留守宅を人に貸していて家賃収入を得ている場合、米国在住者が居住外国人であれば申告義務があり、非居住外国人であれば外国源泉であるため申告の必要がなく、非居住外国人の方が有利に見えます。申告を必要とする場合、居住外国人は非居住外国人に許されないスタンダード・ディダクション(概算額控除)や項目別控除による節税が認められる点で有利と言えます。(737)

 

 

スポーツ選手・芸術家・芸能人Pビザと税金

Pビザは、Oビザ同様、スポーツ選手、芸術家、芸能人などの卓越能力者のためのビザです。国際的レベルのスポーツ競技への出場者、特に秀でた芸術活動家、活動に必須であるサポートスタッフに発給されます。

P ビザ保持者が所得税法上、居住者・非居住者のどちらになるかは、「実質的滞在条件」を適用して計算した米国滞在日数が183日基準よりも多いか少ないかによります。183日を超えた場合、「居住外国人」(居住者)となります。居住者は米国市民と同様、年間全所得を報告して税金計算をします。

Pビザ保持者が実質的滞在条件を適用して計算した結果、滞在日数が183日に満たない場合、「非居住外国人」(非居住者)と判定されます。非居住者の税金上の取り扱いは、居住者のそれと著しく異なります。居住者の場合は、所得の種類(役務所得、投資所得など)に関係なく、すべての所得の合計額(全世界所得)を課税対象とします。それに対して、非居住者の場合は、所得の種類を「外国源泉所得」と「国内源泉所得」に分け、さらにそれぞれを「実質関連所得」と「非実質関連所得」に分けて考え、限られた部分の所得だけが課税対象となります。Form W-2, Form 1099-MISC, Form 1040など、居住用の様式は、非居住者用に設けられた異なる様式Form 1042S, Form 1040NRに分けて使用します。(736)

736卓越能力者Oビザと税金

 

Oビザは、科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツ、テレビ、映画などの分野で「卓越」した能力により功績を残した人に与えられるビザです。例えば、ノーベル賞のような国際的に認知度の高い賞を受賞している場合、国際音楽コンクールで優勝した場合、科学者が米国でのリサーチ・チームに参加する場合、アーティストが全米ツアーを行う場合、野球選手が大リーグでプレーする場合のように、国際的なレベルで活躍している卓越能力者を指します。

Oビザ保持者は、「実質的滞在条件」が適用され、183日を基準とした米国滞在日数よりも長いか短いかによって居住者あるいは非居住者になります。着任年度と離任年度に滞在日数が少ないため非居住者になる場合がある以外、居住者とされて米国市民同様、全世界所得を申告して納税する義務があります。既に一度アメリカ以外の国で税金の対象となった所得を報告することにより二重課税が生じることになります。その場合は外国税額控除の適用によって二重課税の回避が達成できます。居住者は全世界所得が課税対象になり、項目別控除または概算額控除のどちらか有利な控除方式を選択して税金計算ができます。非居住者は米国源泉所得だけが課税対象になって、必ず項目別控除方式を適用して税金計算をしなければなりません。(736)

職業訓練用Mビザと税金  

 

Mビザは、職業訓練用の短期留学ビザです。秘書養成学校、美容学校、パイロット養成学校など、学位を目的としない技術習得のための専門学校生、または職業訓練生として直接職業に結びつく技術を学ぶ留学生のためのビザです。認められる留学期間は、Fビザよりもはるかに短いのが普通です。

Mビザは、所得税法上の居住者・非居住者の判定基準である「実質的滞在条件」からの除外個人とされていて、米国滞在日数に関わりなく、たえず非居住外国人とし扱われます。Mビザ留学生は、たとえ課税対象となる収入がなくても

IRSへ申告書の提出が義務付けられています。使用する様式は、身分情報申告用紙フォーム8843で、留学生の氏名、日本の留守宅住所、ビザの発行日、国籍、パスポートの発行国、パスポート番号、過去3年間のアメリカ滞在日数、当該年度に技術訓練を受けてきた学校名、住所、電話番号、所属教育機関の責任者名、住所、電話番号、過去6年間の保有ビザの種類などの情報を記入します。記入済みのフォーム8843の郵送による提出先は、テキサス州オースティンのIRSセンターです。

留学生にアルバイト収入が発生した場合、非居住外国人用の所得税申告書フォーム1040NRに必要事項を記入し、フォーム1040NRに必要事項を記入し、フォーム8843を添付してIRSへ、郵送または電子申告にて提出します。(734)

派遣管理職Lビザと税金

Lビザは、多国籍企業の重役・管理職(L-1A)および特殊技能(L-1B)の社員の社内転勤に発行される就労ビザです。企業が社員のために申請するビザであり、個人での申請はできません。配偶者にはL-2が発行され、許可を受けるとソーシャル・セキュリティー番号の取得が許され、就労が可能となります。大規模な多国籍企業の場合、一人一人の社員のためにビザを申請するのではなく、一括して会社ごと申請することが可能であり、社員を米国に派遣したいときにその都度申請する手間が省けます。

Lビザ保持者は、「実質的滞在条件」が適用され、183日を基準とした滞在日数よりも長いか短いかによって居住者あるいは非居住者になります。赴任年度と離任年度に滞在日数が少ないため非居住者になる場合がある以外、居住者とされて米国市民同様、全世界所得を申告して納税する義務があります。居住者は全世界所得が課税対象になり、項目別控除または概算額控除のどちらか有利な控除方式を選択して税金計算ができます。非居住者は米国源泉所得だけが課税対象になって、必ず項目別控除方式を適用して税金計算をしなければなりません。社会保障税(ソーシャルセキュリティー税とメディケア税)に関しては、日本からの赴任期間が5年未満の場合、日米社会保障協定に基づいて日本の社会保障税に継続加入することにより、米国の社会保障税が免除されます。就労配偶者の社会保障税の免除は受けられません。連邦贈与税法上、および、遺産税法上、所得税での取り扱いと異なり、必ず非居住外国人となります。(733)

 

婚約者Kビザと税金

K-1ビザは、アメリカ在住の米国市民と結婚することを前提として、海外に在住する婚約者がアメリカへ入国するためのビザです。永住権取得を前提としているため、K-1ビザ審査には永住権取得と同等の厳しさが伴います。K-1ビザの条件は、米国内にいる一方の婚約者が米国国籍保持者であること、そして他方の外国人婚約者が外国にいることです。入国は1回限りであり、他のビザへの変更はできません。入国後は婚約者と90日以内に結婚し、永住権への変更手続きを行わなければなりません。

Kビザ保持者は、「実質滞在条件」を適用計算した米国滞在日数が183日を超えていれば居住外国人となり、超えていなければ非居住外国人となります。12月31日現在、まだ結婚届けを出していない独身の場合、米国滞在日数は90日未満であるため、税法上の身分は非居住外国人となります。すなわち、米国源泉所得がある場合にのみ所得税の申告を必要とします。日本源泉所得などの外国所得は非課税であり、報告義務もありません。

結婚届けを出して12月31日現在既婚者になると、その年度以降、夫婦合算申告、または夫婦個別申告のうち、毎年いずれか有利な申告資格を適用して税金を計算することができます。夫婦合算申告は、一方の配偶者だけに所得があり、他方の配偶者に全く所得がなくても適用可能であり、個別申告よりも税金が低く計算されるため大変有利な申告資格です。配偶者の身分が非居住者の場合でも、選択により居住者として扱って夫婦合算申告を適用することが認められます。(732)

 

 

交換教授、研究者、留学生のためのJビザと税金

交換教授、研究者、留学生のためのJビザは、教育機関やその他非営利機関公認の研修、インターンシップ・プログラムへの留学生や研究者としての参加者に発給されます。国務省教育文化局により指定されたこれらのプログラムは、日米交流を推進する原動力となっています。医学の学位を持ちレジデントまたはインターンとして実習する医学生、客員教授として大学から招聘(しょうへい)される学者、奨学金を得て研究機関で研究活動をする教授クラスの研究者、高校生の交換留学、企業の研修生、夏季実習などのプログラムやオペア・プログラムも含まれます。

Jビザは、「実質的滞在条件」(IRC内国歳入法第7701条)からの除外個人とされていて、米国滞在日数が183日を超えても、一定の限られた年数の間、税法上非居住者として扱われます。Jビザの教授、または、研究者は、米国入国から最初の2年間については非居住外国人であり、2年経過後は居住外国人となります。教授・研究者が、大学、病院、その他の教育機関において教育または研究について受け取る報酬は、最初の2年間について課税免除となります。

Jビサ保持者が教授・研究者ではなく、大学の学生である場合は、Fビザ同様、米国入国後5年間について非居住外国人となります。Jビザ留学生が受け取る教育または生計維持のための日本の親・会社・政府からの仕送り・手当・給付・交付金等のすべての送金は、米国では非課税です。Jビザ保持者は社会保障税(ソーシャルセキュリティー税とメディケア税)も免除されます。(731)

 

ジャーナリストIビザと税金

ジャーナリスト、メディア関係の人のためのIビザは、新聞、雑誌の派遣記者、編集者、テレビのレポーター、フリーのライター、演劇、音楽の批評家、メディア関連会社の駐在員に発給されます。申請者が出身国(日本)のメディアから報道関係者として認知された人物であるかどうかが認可のポイントとなります。ビザの有効期限はスポンサー企業との契約期間によって異なります。延長に期限はないため、スポンサー企業さえ確保しておけば業務が終了するまで何年でも長期間の滞在が許されます。Iビザは、EビザやLビザと異なり、スポンサーとなる企業からではなく、ビザを取得する本人からのビザ申請となります。申請には日本のメディア関連企業による収入の保証が必要です。米国の企業から収入を得ることはできず、本国の企業から収入を得て、米国で取材活動をしていることが基本です。Iビザを持っているとメディア関係であれば、どの企業の仕事でもできると考えるのは間違えです。Iビザはアメリカの企業から収入を得ることはできません。

Iビザ保持者が、所得税法上、居住者・非居住者のどちらになるかは、「実質的滞在条件」を適用した滞在日数が183日基準よりも多いか少ないかによります。居住外国人と判定されたIビザ保持者は、フォーム1040を使って所得税の確定申告を行います。非居住外国人と判定されたIビザ保持者はフォーム1040NRを使って確定申告を行います。(730)

専門職Hビザと税金

Hビザは、専門職の一時的就労用のH-1B、季節労働用のH-2B、研修用のH-3など、仕事の種類によって分けられています。H-1Bは、特殊技能を要する職業に従事する人のためのビザです。教育、心理学、経営学、会計学、数学、工学、建築、物理学、法律、医学、衛生学、神学、芸術などの分野で、学士またはそれ以上の学位が必要です。職業経験のない新卒者でも取得可能な就業ビザです。ビザ申請を行うスポンサーとなる米国内の企業、研究所、財団法人などの雇用主を必要とします。米国で収入を得ることができますが、雇用主として届け出をしたスポンサー企業から支払われる報酬だけを受け取ることができます。ビザの有効期限は最初に3年、その後3年、通算6年まで延長可能です。

Hビザは、所得税法上居住者・非居住者を決定する「実質的滞在条件」を適用して183日を基準とした滞在日数よりも長いか短いかによって、居住者あるいは非居住者になります。学位取得後、実務研修(OPT)を受けたFビザ学生が専門職用の労働ビザを申請しH-1Bを取得した年度は、ビザ切替日が年度の前半であれば、その年度の税法上の身分は非居住外国人から居住外国人に切り替わります。すなわち、同一年度に二つの身分を有する「二重身分」の申告書を作成します。非居住者であった期間のデータを記入したフォーム1040NRを、居住者期間の所得で計算したフォーム1040に添付して申告します。ビザ切替日が年度の後半であれば、その年度は一年中を通じて非居住外国人として、フォーム1040NRを使って税金申告をします。2年目以降の申告は居住外国人で行います。Fビザ時代に免税であった社会保険税(ソーシャルセキュリティー税とメディケア税)は、H-1B取得と同時に課税対象となります。(729)

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