転勤費用控除

転勤費用は、所得調整控除の一つとして控除が認められます。新しい勤務地への引越費用で、納税者本人と家族の旅費、宿泊費、家財道具運送料の合計額です。転勤費用の控除が認められるためには、転勤距離条件と勤務期間条件の二条件を満たす必要があります。

「転勤距離条件」―旧住居と新勤務地の間の距離が、旧住居と旧勤務地の間の距離よりも50マイル以上長くなければなりません。新卒者の初就職を除き、勤務地が変わる必要があります。勤務地は同じまま、単に50マイル以上離れた新住居へ引っ越した場合の費用は控除できません。同一の雇用主であっても勤務地が変われば適格費用として控除できます。自由業も被用者の場合と同様、条件さえ満たせば新居への引越費用の控除が認められます。

「勤務期間条件」―新しい勤務地に到着後の12ヵ月のうち、少なくとも39週間フルタイムで働くことを要します。勤続の必要はなく、12ヵ月のうち合計勤務日数が39週間分であればよいことになっています。同一の勤務先である必要はなく、異なる雇用主であってもかまいません。国外からの転勤費用も控除が認められます。(538)

 

所得調整控除14 その他の所得調整控除 Other Deductions

<所得調整控除(14) その他の所得調整控除 Other Deductions>

 調整総所得の計算過程で総所得から差し引く形で認められるのが所得調整控除です。以下の所得調整控除は、項目別控除または概算額控除のいずれの控除方式を採った場合でも認められます。

  • 定期預金早期解約ペナルティー――契約に基づいて高率金利が既に払われた定期預金を、満期前に解約したために低率金利に置き換えられて発生する早期解約ペナルティーは控除ができます。フォーム

1040、ライン33。

  • 陪審手当返上額――国民が陪審員として裁判の審理に参加する制度の下では、通常陪審員の任務中も雇用主から被用者へ給与が継続支給されます。同時に裁判所からも陪審手当(フォーム1040、ライン21)が支給されますが、その金額を雇用主へ返上した場合、控除が認められます。フォーム1040、ライン35。

動産賃貸経費――車、機械などの動産を人に貸して賃貸収入(フォーム1040、ライン21)を得ている場合、収入を生むために関連した必要経費の控除が認められます。フォーム1040、ライン35。(49)

所得調整控除13・人権侵害弁護士費用控除

<所得調整控除(13) 人権侵害弁護士費用控除>

 2004年10月22日まで、人権侵害弁護士費用は、他のすべての控除可能な弁護士費用とともに、項目別控除の「その他控除」として認められていました。

2004年10月22日に成立した税制改正で、同年10月23日以降、人種差別、雇用差別などの人権侵害訴訟のために支出した弁護士費用は、項目別控除としてではなく所得調整控除として認められます。ただし、控除できるのは課税対象となった和解金、示談金などの所得金額までです。人種差別、雇用差別などの人権侵害以外の控除可能な弁護士費用は、項目別控除の「その他控除」として認められ、2%の足切り制限の対象となります。就労ビザを取得するためにかかった弁護士費用、離婚手当回収にかかった弁護士費用が控除可能なその他の弁護士費用の例です。

項目別控除は代替ミニマム税の対象となるのに対して、所得調整控除として認められる人権侵害弁護士費用は代替ミニマム税の計算上控除できるため、代替ミニマム税の問題を回避できます。(48)

所得調整控除11・ 海外役務所得控除 Foreign Earned Income Exclusion

<所得調整控除(11) – 海外役務所得控除  Foreign Earned Income Exclusion>

 「海外役務所得控除」は、海外居住者が所得税申告をする際に認められる所得調整控除です。グリーンカード(永住権)保持者は税法上「居住外国人」となるため、たとえ米国外に住んでいる場合でも、米国市民の場合と同様、毎年申告書に全世界所得を報告してIRSへ提出する義務があります。この点、ある一定の日本国内所得があった場合にだけ海外居住者が申告を必要とする日本の税法規定とは大幅に異なります。

米国外の所得も含めて全世界所得を報告するため、海外居住者は外国とアメリカで二重に税金を納めるわけではありません。それは海外で得た「役務所得」(給与のこと)のうち、2013年97,600ドル、2014年99,200ドルの「海外役務所得控除」(フォーム2555)が認められるためであり、さらに外国税額控除の仕組みにより二重課税の回避が達成できるためです。海外に居住する米国市民のためのこれらの特典が、海外に居住する永住権保持者にも適用されるため、アメリカでの申告書上、概して税金の支払いは殆ど必要としません。(46)

所得調整控除10・医療貯蓄控除 Health Savings Account

所得調整控除(10)・医療貯蓄控除 Health Savings Account>

 医療貯蓄口座(Health Savings Account)へ積立を行うと所得調整控除が認められます。自営業または中小企業(従業員50名未満)の65歳未満の従業員で高額ディダクティブル(自己負担額)の医療保険制度の加入者は、自分名義で開設した保険会社、銀行などの金融機関の医療貯蓄口座への積立ができます。控除金額は、個人加入については自己負担額の65%、家族加入については自己負担額の75%を上限とします。

加算される利子は非課税です。口座からの引出も、資金が保険でカバーされない医療費の支払に充てられる限り非課税です。医療費に充てられない課税対象の引出は、所得税と15%ペナルティー税が課されます。

高額ディダクティブル(自己負担額)とは、個人加入1250ドル以上、6250ドル未満、家族加入2500ドル以上、12500ドル未満を指します。雇用主が従業員のために行う非差別積立も非課税です。雇用主が積立を行う場合は、従業員本人は積立ができません。個人所得税申告書フォーム1040のライン28で控除し、フォーム8889に詳細を記入して添付提出します。(45)

所得調整控除09・舞台芸術控除 Performing Artist Expenses

<所得調整控除(9)・舞台芸術控除 Performing Artist Expenses>

低収入の舞台芸術家の必要経費は所得調整控除として認められるため、項目別控除の控除方式を採らなくても控除できます。ミュージカル・舞台俳優、ダンサー、ミュージシャン、オペラ歌手などが該当します。雇用主と被用者の関係があって給与支給を受けている舞台芸術家が、次の3条件を満たすと控除できます。

①      報酬を200ドル以上支払った雇用主が2箇所以上あること。

②      必要経費の支出が収入の10%を超えていること。

③      調整総所得が1万6000ドル未満であること。

夫婦とも舞台芸術家である場合は、①複数雇用主、および②10%必要経費の2条件を夫婦の各々が満たす必要がありますが、③調整総所得の条件は、夫婦合算の所得が一人の場合と同じ1万6000ドル未満でなければなりません。3条件を満たさない場合、所得の2%足切り制限の対象となる項目別控除の一つとして控除できます。

報告方法は、まずフォーム2106に必要経費を記入します。その合計金額をフォーム1040ライン24に転記すると控除が認められます。(44)

<所得調整控除08・清浄燃料車控除>2014年規定廃止

<所得調整控除(8)・清浄燃料車控除>

 ― この規定は廃止されました。2014年現在

 控除は認められません。

所得調整控除07・離婚扶助料控除 Alimony

所得調整控除(7)・離婚扶助料控除 Alimony>

 法律に基づいて正式に離婚し、その結果、慰謝料、離婚手当、子女養育費などを元配偶者に支払います。

そのうち、裁判所の命令または書面契約に基づく離婚手当(Alimony)の支払いは、支払人側には所得調整控除が認められます。逆に受取人側は課税対象の所得となります。お互いに有利な場合は、契約書の書き方によって控除と課税の対象外にすることも認められています。

控除の条件として、現物ではなく現金での支払いであること、子女養育費の支払ではないこと、二人が同一住居に住んでいないこと、受取人の死亡によって中止となる支払いであること、受取人のソーシャルセキュリティー番号を控除金額に付記すること、が挙げられます。また、受取人の再婚により支払者は控除ができなくなります。

受取人が帰国して日本居住者になった場合、新日米租税条約第17条により、2004年7月1以降アメリカでは非課税となるため、支払人は30%の米国源泉税の徴収を行う必要がなくなりました。支払人はこの場合でも控除が認められます。(42)

所得調整控除06・授業料控除  Tuition Deduction

<所得調整控除(6)・授業料控除  Tuition Deduction>

 大学教育費のうち授業料について最高$4000までが所得調整控除として認められます。このほか税額控除、項目別控除、合計3種類の控除方法があり、その中から有利な方法を選択できます。それぞれの控除方法に異なる制限が設けられています。所得調整控除と税額控除は一定収入金額以下の場合に認められ、項目別控除は一定内容の学業の場合に認められます。

所得調整控除が認められる経費に、納税者、配偶者、扶養家族の授業料、登録料、学校を通じて購入する教材費が含まれます。寮費、教科書代、交通費は含まれません。大学、短大、大学院、専門学校で四半期学期以上受講することが求められます。Form 8917に詳細を記入して提出します。

<独身>

調整総所得が6万5000ドル以下の場合- $4,000

調整総所得が6万5000ドル超、8万ドル以下の場合-$2,000

調整総所得が8万超の場合-ゼロ

<既婚者合算申告>

調整総所得が13万ドル以下の場合- $4,000

調整総所得が13万ドル超、16万ドル以下の場合-$2,000

調整総所得が16万ドル超の場合-ゼロ

(41)

所得調整控除05・教材費控除 Educator Expenses

<所得調整控除(5)・教材費控除 Educator Expenses>

 教材費控除は学校の先生に特別に認められている所得調整控除です。幼稚園、小学校、中学校、高校までの教師、講師、カウンセラー、校長、または助手として、年間900時間以上を費やす教職に携わる場合、書籍や教材を250ドルまでの控除が認められます。

コンピューター、ソフトウエアー、関連サービス費用、その他の機器、および教室補助教材を含みます。体育授業の場合は体育教育関連資材に限ります。夫婦共に教職に就いている場合は、夫婦合算申告上、

本人と配偶者の二人分500ドルの控除が認められます。

教材費控除をとるためには、フォーム1040またはフォーム1040Aで申告書を作成する必要があります。所得調整控除であるため、項目別控除を採用せず、個別控除の控除方式を採用した場合でも、当控除が認められます。250ドルの上限額を超える支出がある場合、超過額はスケジュールAの項目別控除の一つとして控除できます。(40)

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