生命保険金・死亡給付金――日本での課税

 

生命保険金・死亡給付金の日本での課税は、保険料掛け金を誰が負担していたか、保険金の受取人が誰であるかによって、相続税、所得税、あるいは贈与税のいずれかの税金の対象となります。

 

相続税―保険料負担者が被保険者(死亡者、例えば夫)であった場合、相続人が受け取る保険金は相続財産に含まれ、他の相続財産と併せて相続税(10~55%)が課せられます。その際、法定相続人一人当たり500万円の特別控除が認められます。例えば、妻と子三人が遺された場合、保険金のうち2000万円までが非課税扱いとなります。雇用主が保険料を負担していた場合、被保険者(被相続人)が負担したことと見なされ、受取保険金は相続財産となります。

 

所得税―保険料負担者が被保険者(死亡者、例えば夫)ではなく、保険金の受取人(妻)である場合、一時所得として受取人に所得税と住民税が課せられます。一時所得を計算する上では、受取保険金の半額部分だけが課税対象になるため、相続税と比べて有利となります。保険料の一部を被保険者(夫)が負担し、残りの部分を保険金受取人(妻)が負担していた場合は、保険料の負担比率で按分した金額がそれぞれ相続財産および一時所得となります。

 

贈与税―被保険者が夫、保険料負担者が妻、保険金受取人が子の場合のように、保険料負担者が被保険者(夫)および受取人(子)以外のときは、保険料負担者(妻)から受取人(子)に対して、保険金の贈与があったこととして、受取人(子)に贈与税(10~55%)が課せられます。(721)

生命保険金・死亡給付金――米国での課税

生命保険金・死亡給付金は、死亡者が非居住外国人である場合と米国籍・居住外国人である場合とで米国での税金上の取り扱いが異なります。

非居住外国人

非居住外国人の死亡により、保険会社から支払われる生命保険金・死亡給付金は、連邦所得税や遺産税、贈与税の課税対象になることなく、その全額を受け取ることができます。

米国籍・居住外国人

米国籍者あるいは居住外国人の死亡に伴って支払われる生命保険金・死亡給付金は、連邦所得税の課税対象にはなりませんが、保険契約によっては連邦遺産税(Federal Estate Tax)の対象になる場合とならない場合とがあります。生命保険金・死亡給付金が遺産税の課税対象となるかならないかは、死亡した保険加入者 (被保険者、例えば夫)が保険契約証書上、保険の所有者としての権利を有していたかどうかによります。保険の所有者としての権利とは、保険契約の解約、保険金の受取人の変更、保険証書の譲渡、保険に基づく借入れの権利などに関する決定権を持っていることを指します。税金を回避するには被保険者に一切の権利がない生命保険の契約を締結することが必要です。既に契約している生命保険証書がある場合は、所有者としての権利や決定権をすべて相続人(妻)へ譲渡することにより、生命保険金・死亡給付金の支払いについて連邦遺産税がかからないようにすることができます。ただし、死亡時から3年以上前に権利の譲渡が完了していなければなりません。(720)

米国籍の夫の死

米国籍の夫が財産を遺して亡くなりました。ニューヨーク在住、国際結婚暦25年、生存配偶者はグリーンカードを保持する日本人と日米二重国籍の子2人。遺産は、米国にある不動産や銀行預金、401(k) プラン、ペンションなどであり、日本財産はありませんでした。納税・申告を必要とするのは米国の遺産税だけで日本の相続税の納税・申告は必要ありません。

米国の遺産税 (Estate Tax) は、故人 (被相続人) が遺した財産(遺産)の価値(時価評価額)に対して課税される税金であり、相続人 (生存配偶者と2人の子) の人数に関わりなく計算されます。財産を受け継ぐ遺族(相続人)に対する課税である日本の相続税 (Inheritance tax) の納税義務者とは逆で、被相続人(実際には遺産管理人・遺言執行人)が遺産税の納税義務者です。また、州レベルの税制度が存在する場合があります。ニューヨーク州がその一例で、州遺産税の納税・申告も必要とします。 ネブラスカ州、ペンシルべニア州、ケンタッキー州、インディアナ州のように、遺産税のかわりに相続税を課す州があります。連邦遺産税の税率は、2019年現在18%~35%の10段階の累進税率です。課税対象となる遺産の金額が基礎控除1140万ドル (2019年、日本円に換算すると約1億2400万円) を超える場合に税金が発生します。 (718)

米国にある財産の相続

日本の親が亡くなり、遺産の中に米国内にある不動産や銀行預金が含まれていました。米国に住んでいる子(永住権保持者)が米国にある財産を相続した場合に発生する日本の相続税と米国の遺産税(Estate Tax)を検討します。

 財産を遺して亡くなった親が日本に居住する日本人であり、財産を受け継ぐ相続人が日本国籍保持者である場合、その相続人の居住国が日本であるか米国であるかに関係なく、日本の相続税が課せられます。米国永住権を保持して長期間米国に居住していたことは、日本の相続税の決定上、何ら影響を及ぼしません。財産が遺された国についても、米国・日本を含めた全世界財産が課税対象となります。日本の親が遺した米国不動産や銀行預金を相続する子が、米国に居住する永住権保持者であったとしても、日本に居住する他の相続人同様、日本の相続税を免れることはできません。

親の米国税法上の身分は非居住外国人であるため、米国内に遺された財産のうち、不動産だけが連邦遺産税の対象となり、米国銀行預金は税法規定上課税対象外です課税対象遺産から基礎控除を差し引いた残額に税率を掛け合わせて連邦遺産税を算出します。非居住外国人の基礎控除は一律6万ドル、または日米相続税条約第4条に基づく金額のうち、いずれか多い金額です。基礎控除は、税額の計算過程で税額控除の形で処理されます。条約第4条に基づく金額とは、米国市民用の基礎控除11145万ドル(2019年)に、課税対象遺産が全世界遺産総額に占める割合を掛け合わせて得られた金額です。(717)

相続税/遺産税  日米比較

 

日本の相続税 (Inheritance tax) は、財産を受け継ぐ遺族(相続人)に対する課税であるため、納税義務者は相続人です。 米国の遺産税 (Estate tax) は故人(被相続人)の遺した財産(遺産)に対する課税であるため、納税義務者は被相続人(実際には遺産管理人・執行人)です。贈与税も同様に、日米で納税義務者が逆になっていて、日本では受贈者が、米国では贈与者が納税義務者になります。

日本の相続税は、2019年現在、10%から55%までの8段階の累進税率で、課税対象となる相続財産が基礎控除の金額を超える場合に税金の支払を必要とします。基礎控除は3000万円の定額控除に法定相続人一人当たり600万円の比例控除を加えた金額です。法定相続人の人数が多ければ基礎控除も増加して、相続税の総額が減額する仕組みとなっています。

米国の遺産税は、18%から40%までの10段階の累進税率で、課税対象となる遺産の金額が基礎控除1億1400万ドル(2019年)を超えれば税金が発生します。米国の遺産性は富裕層だけに適用となると言うことができます。永住権保持者は外国籍であるため、必ずしもこの大幅控除の恩恵を受けられるとは限りません。永住権保持者が米国にDomicile (定住地) があり、遺産税法上、米国籍と同等の身分判定を受けることができれば、この1億1400万ドルの基礎控除の適用を受けます。非居住外国人は、課税対象となる遺産の種類や基礎控除が異なるため注意を要します。(715)

 

 

国際相続:日本にある財産の相続

 

日本で親が亡くなり、米国に住んでいる子 (永住権保持者) が日本にある財産を相続した場合の日本の相続税

(Inheritance Tax) と米国の遺産税(Estate Tax)について検討します。日本の相続税法上、財産を受け継ぐ相続人が相続税の納税義務者となりますが、米国の遺産税法上では日本と逆で、財産を残して亡くなった人(被相続人)が遺産税の納税義務者となります。実際には死亡者の遺言執行人あるいは管財人がその任務を請け負います。

まず、日本の相続税についてですが、相続した財産が日本国内財産であるため、相続人の国籍や居住国に関わりなく、必ず日本の相続税が課せられます。

一方、米国の遺産税は、日本のように財産を受け継ぐ相続人(子)に課せられるのではなく、遺された遺産の価値に対して課せられる税金であり、相続人の人数や居住国に関わりなく計算されます。米国税法上の日本の親の身分は非居住外国人であるため、課税対象となる遺産は一定の米国内財産(不動産、家具、車、宝石等の有形資産、米国法人発行の株式、米国債券)だけに限られます。非居住外国人名義の米国銀行預金や外国株式・債券、生命保険金は、遺産税法上非課税です。このケースは、親が遺した財産は日本だけにあって米国にはないため、連邦遺産税は発生しないというのが答えとなります。(707)

 

国際相続:日米相続税条約の効用

 

日本の相続税・贈与税は、財産を受け取った相続人および受贈者に対して課税されます。一方、アメリカの連邦遺産税・贈与税は、日本とは逆に被相続人(死亡者)・贈与者に対して課税されます。日本とアメリカとで納税義務者が逆なのです。そのため相続人が日本に居住し、被相続人が米国に居住している場合は、日米両国で財産が課税の対象になることによる二重課税が生じます。このような二重課税を排除するために締結されたのが日米相続税条約です。

米国税法上の非居住外国人が日本とアメリカに財産を遺して亡くなった場合、アメリカに所在する財産だけが連邦遺産税の対象となります。米国国内法で非居住外国人に認められる遺産税の基礎控除の額は6万ドルです。6万ドルは、米国市民・米国居住者に適用される非課税遺産額の$11.18Million(2018年、約12億円)と比較して著しく低い金額であることから、日本国籍を持つ非居住者には日米相続税条約第4条に基づいて、市民・居住者用の非課税遺産額を適用する特例計算が認められます。すなわち、米国内遺産が全世界遺産に占める割合を市民・居住者に認められている非課税遺産額に掛け合わせた金額を、非居住外国人の非課税遺産額とする計算であり、節税に大きく役立ちます。(708)

 

米国居住者が海外で受け取った贈与・相続の報告

税法上、米国居住者が非居住外国人 (例えば日本の親) から受け取る国外財産の贈与や相続は、米国の贈与税・遺産税の対象外です。課税対象となるのは、米国内財産の移転に限られます。日本で贈与税・相続税を納めて不動産や預金などの財産を親から受け継いだ受贈者は、申告書フォーム3520 (Receipt of Certain Foreign Gifts) に財産の詳細内容を記入の上、IRS (内国歳入庁) へ報告する義務があります。提出先は、所得税申告書の提出先とは異なります。報告書の提出期限は所得税申告書の提出期限と同じ暦年終了後の4月15日(延長可)です。提出義務者は、海外贈与・相続の受贈者・相続人です。遅延申告の場合、ペナルティーが課せられます。

申告書フォーム3520の記入事項は、次の通りです。

  • 納税者の氏名、納税者(ソーシャル・セキュリティー)番号、住所、配偶者の納税者番号
  • 課税年度内に非居住外国人から受け取った10万ドル超の非課税贈与・相続・遺贈の移転日、財産の内容を、時価$5000 超の財産ごとに記載
  • 外国企業等から受け取った1万4139ドル超の贈与、移転日、贈与者名、同住所、納税者番号、財産の詳細内容、時価
  • 代理人による支払の有無
  • 該当出国者(一定条件に該当する永住権放棄者)から年間贈与非課税額 (1万5000ドル) 超の贈与を受け取った場合、その有無。有は贈与税申告書フォーム709を提出して納税すること。                                                                   (704)

相続税(日本)と遺産税(米国)の比較

 

納税義務者

日本の相続税 (Inheritance tax) は、財産を受け継ぐ遺族 (相続人) に対する課税であるため、納税義務者は財産を受け継ぐ相続人です。

米国の遺産税 (Estate tax) は、故人(被相続人) の遺した財産(遺産)に対する課税であるため、納税義務者は被相続人(実際には遺産管理人・執行人)です。

 

基礎控除

日本の相続税の基礎控除は、2019年現在3000万円の定額控除に、法定相続人一人当たり600万円の比例控除を加えた合計額です。法定相続人の人数が多ければ多いほど基礎控除も増額となり、相続税の総額が減額する仕組みとなっています。基礎控除額は、相続人が一人の場合3600万円、二人の場合4200万円になります。

米国の遺産税の基礎控除は、2018年11.18 millionドル、2019年11.4 million ドルであり、課税対象となる遺産の金額がこの基礎控除額を超えれば税金が発生します。ドル表示であるため実感がわかないかも知れませんので、$1=110円で日本円に換算すると約12.5億円となり、日本とは比べものにならないほど高額になります。遺産額が12.5億円までは税金が発生しないわけですから、富裕層だけに適用され、米国市民のほとんどが亡くなっても遺産税の心配をする必要がないことを意味しています。

永住権保持者は外国籍であるため、必ずしもこの大幅控除の恩恵を受けられるとは限りません。永住権保持者が米国にDomicile (定住地) があり、遺産税法上、米国籍と同等の身分判定を受けることができれば、基礎控除の適用を受ける可能性があります。非居住外国人は、課税対象となる遺産の種類や基礎控除が異なるため注意を要します。日米相続税条約による救済措置も考慮に入れることが勧められます。

 

税率

日本の相続税の税率は、10%から55%までの8段階の累進税率で、最高税率は55%です。

米国の遺産税の税率は、18%から40%までの12段階の累進税率で、最高税率は40%です。

 

生命保険金―米国での課税

生命保険金・死亡給付金の税金上の取り扱いは、死亡者が米国籍保持者・居住外国人である場合と非居住外国人である場合とで異なります。非居住外国人の死によって生命保険会社から生命保険金・死亡給付金が支払われた場合、米国で所得税や遺産税、贈与税が課税されることはありません。

死亡したのが米国籍保持者・居住外国人である場合、遺産税(Estate Tax)の課税を検討する必要があります。保険契約によっては遺産税の対象になる場合とならない場合とがあります。保険金が遺産税の課税対象となるかどうかは、死亡した保険加入者(被保険者、例えば夫)が保険証書上、保険の所有者としての権利を有していたかいないかによります。生命保険の所有者としての権利とは、保険契約の解約、保険金の受取人の変更、保険証書の譲渡、保険に基づく借入れの権利などに関する決定権を持っていることを指します。税金を回避するには被保険者に一切の権利がない生命保険の契約を締結することが必要です。既に契約している生命保険証書がある場合は、所有者としての権利や決定権をすべて相続人(妻)へ譲渡することにより、生命保険金・死亡給付金の支払いが遺産税のかからないようにすることができます。ただし、死亡時から3年以上前に権利の譲渡が完了していなければなりません。(687)

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