遺産分割協議書

日本での遺産分割協議が成立した後、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書とは、「誰が、何を、どれだけ相続するか」を記した書類です。内容が明確であれば、縦書きでも横書きでも、筆記やワープロで作ってもよく、書式は自由です。ただし、相続人全員の署名と印鑑証明を受けた実印による押印が必要です。相続人全員の参加が絶対条件で、一人でも欠けていたら、その協議書は無効とされます。

貯金名義の変更、相続税申告書の提出、および不動産の所有権移転登記には、相続を証する書面として遺産分割協議書を必要とします。また、配偶者法定相続分非課税や小規模宅地等の特例などの相続税軽減措置を受けるためには、必ず遺産分割協議書を添付する必要があります。相続税申告や不動産移転登記がなく、相続人の間で後日遺産分割に関する争いが生じる恐れのないときは、遺産分割は必ずしも書面がなくでもかまいません。

なお、被相続人の生前(相続開始前)になされた分割協議は、法律上の効力を持っていません。相続に関する具体的な権利は被相続人の死によって発生するものだからです。(651)

遺産分割協議(3)――「寄与分制度」と「特別受益制度」

被相続人の財産の維持、形成、および増加に特別に寄与・貢献してきた法定相続人を「特別寄与者」として認め、遺産の分配にあたり「寄与分」として法定相続分を超える額の財産を取得できるように協議で計らうことを「寄与分制度」といいます。例えば、長男が故人を助けて事業の発展に寄与してきた場合です。寄与分は、特別寄与者の当然の権利として認められるのではなく、相続人同士の協議で認められるもので、その内容や程度についても協議の中で決められます。

「寄与分制度」とは逆に、故人からの生前贈与や遺言による財産の贈与が与えられたため、その法定相続人が既に相続財産を受け取った者として扱われることを「特別受益制度」といいます。例えば、父親の生前、住宅購入資金の援助を受けると、特別な相続分の前渡しを受けた「特別受益者」とされ、その分が相続分から差し引かれます。特別受益がどの程度のものか、どんな場合に相当するのか、寄与分制度と同様、明確な客観的基準はなく、あくまでも相続人同士の話し合いで決めることです。(649)

遺産分割協議(2)

日本の法定相続人の中に未成年者がいる場合、本人が単独で遺産分割協議に参加することはできません。法律上、未成年者は契約を結ぶ場合、法定代理人が必要となります。通常、親が未成年者の法定代理人になりますが、遺産分割では親は法定代理人になれません。親も相続人である限り、利害関係がからむ恐れがあるからです。この場合、家庭裁判所によって選定された特別代理人と親との間で遺産分割協議をします。

遺産分割協議には法定相続人の他に、故人から包括的な遺贈を受けた人(包括受遺者)、および、相続分の譲渡を受けた人(相続分譲受人)も参加します。一部の法定相続人を除外したり、その者の意思を無視した協議分割は無効になります。

次の場合、遺産分割協議自体を行うことができません。

  • 法定相続人の中に胎児がいる場合。この場合、胎児が生まれるのを待って、その後代理人を立てます。
  • 遺言で遺産分割協議をすることが禁止されている場合。
  • 法定相続人全員で遺産分割協議をすることを禁止した場合。

(648)

遺産分割協議(1)

日本の相続人の中の一人からでも要求があれば、すべての相続人が協議で互いに話し合って遺産分割を決めます。遺言による指定相続分や民法による法定相続分が決められているのに、相続人同士の話し合いで自由に遺産分割の割合を変えられるというのは、矛盾しているようにも感じられます。しかし、指定相続分および法定相続分はあくまでも各相続人の取り分の限度で、その分に関して相続人はいつでも自分の権利を主張できます。したがって、財産の一部または全部を放棄するのも自由です。

遺産分割協議開始の呼びかけは相続人の誰であってもすることができますが、相続人全員の協議への参加が絶対条件です。一人でも欠けていたらその協議は無効とされます。必ず本人が協議に参加しなければならないというわけではなく、代理人を立てることができます。全員が一堂に会して協議するのが普通ですが、書類を郵送することで書面による協議を行うことも可能です。相続争いの原因となる要素が最も多いとされている遺産分割は、遺産の内容・性質、相続人の心身状態・年齢・職業・生活形態など、あらゆることを考慮して話し合いが行なわれることが大切です。(647)

 

遺言による指定分割

日本で相続人が二人以上いる場合、被相続人は生前に遺言によって法定相続分とは異なる相続割合を指定することができます。指定相続分による遺産分割のことを指定分割といいます。法定相続分は、あくまでも遺言がない場合の補助的な基準であり、故人の意思が尊重されますから、指定分割は法定相続分による分割よりも優先されます。

相続財産のすべてについて相続分を指定することも、一部の相続人の取り分についてだけ指定することもできます。相続分の指定が一部の相続人だけであった場合、他の相続人は残りの財産について法定相続分によって分けることとされています。例えば、妻と子供2人、遺産額1億円と「遺産の4分の3を妻に与える」という遺言を残して夫が死亡したとします。この場合、妻の相続分は7500万円、子供の相続分は残りの2500万円を等分して、それぞれ1250万円になります。

相続人の最低限相続を保証する制度である遺留分を侵害する相続分の指定が遺言によってなされた場合、遺言そのものは有効ですが、遺留分権利者は申し立てにより侵害分の取り戻し請求をすることができます。(646)

日本の相続税 配偶者と父母が相続人の場合

 

故人(被相続人)に子やその代襲者(孫)が一人もいないときは、日本では配偶者と法定相続第2順位の父母(直系尊属)が相続人になります。この場合の相続分は、配偶者が遺産額の3分の2、父母(直系尊属)が3分の1になります。父母のどちらかが死亡により相続権を失っていた場合は、残りの1人が3分の1すべてを相続します。直系尊属の父母とは、もちろん故人(被相続人)の親ということですが、実父母、養父母の区別はありません。したがって、故人が養子だったならば、実の親と育ての親の双方が相続人になります。

直系尊属の父母とも既に死亡している場合は、かわりに祖父母が代襲相続人として相続します。その場合、父方、母方は関係がなく、全員が健在ならば4人で相続分を均等分することになります。

故人(被相続人)が9000万円の遺産を残して配偶者と父母が法定相続人である場合、配偶者は遺産の3分の2の6000万円、父は3分の1の半額の1500万円、母は父と同じ1500万円が法定相続分となります。父母とも死亡していて祖父母二人が健在ならば、代襲相続人として祖父、祖母が1500万円ずつ相続します。(644)

婚外子の相続分

法的な婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子のことを摘出子といい、正式婚以外で生まれた婚外子のことを非摘出子といいます。2013年12月5日、日本の民法の一部が改正され、婚外子の相続分が摘出子の相続分と同等になりました。法定相続分に関する民法条項のうち、婚外子の相続分を摘出子の相続分の2分の1としていた従来の民法規定(第900条第4号)は、憲法第14条第1項違反であると判定されました。生まれてきた婚外子には何の責任もないのに、摘出子との間に相続分において差別が設けられているのは憲法の平等の原則に反するというのがその根拠です。

婚外子が相続を受けるには、父親である被相続人によって生前に認知されているか、被相続人の死後、認知の請求を家庭裁判所に対して行い、認知(強制認知)されることが必要です。なお、死後認知の請求は、父親が死亡してから3年以内に行わなければなりません。被相続人の死後の認知の場合、遺産分割が既に終わっていれば、その相続分に相当する価額を各相続人に請求することができますが、遺産分割のやり直しを求めることはできません。

妻に連れ子があり、夫が死亡した場合には、その連れ子には相続権がないのは当然ですが、養子縁組をしていれば相続権があり、その相続分は嫡出子と同様です。(643)

相続の限定承認

土地や建物などのプラス財産と借金などのマイナス財産を、相続財産としてすべて一手に引き受けるという一般的な相続方式のことを単純承認といいます。単純承認は、裁判所への手続きを必要とせずに相続を実行できます。借入金などの負債が多いため、あるいは相続トラブルを避けるため相続権を放棄したい、またはプラス財産の限度でしかマイナス財産の相続はしたくないなどの場合には手続きが必要です。相続財産の中から負債を支払って、それでも財産が残っていれば相続するという、留保付きの相続方式のことを相続の「限定承認」(民法922条)といいます。限定承認を行うには、相続があったことを知った日から3カ月以内の熟慮期間に、管轄の裁判所への申請手続きと、法定相続人全員の合意が必要になります。

被相続人が死亡した直後は、葬儀や初七日であわただしく、一般に相続の話が出てくるのは四十九日過ぎという例が多いようです。それから相続財産の調査にかかり、プラスの財産とマイナスの財産がそれぞれいくらになるか集計して把握する必要があります。その結果、単純承認をするか、相続放棄あるいは限定承認をするかを決めなければなりません。財産が多く、また権利関係が複雑であったりすると、3カ月の期間はすぐに過ぎてしまいます。そのため、この3カ月の間に調査が終わりそうにもない場合には、家庭裁判所に期間の延長を求めることができます。(642)

相続の単純承認

 相続人が故人のプラスの財産とマイナスの財産のすべてを無条件、無制限に承認して継承することを、日本の民法で「相続の単純承認」といいます。自分が相続人となったことを知った時から3カ月以内に「相続放棄」あるいは「限定承認」のいずれかの手続きを家庭裁判所に対して申述しなかった場合には、自動的に相続の「単純承認」をしたことになります。相続財産の中に借金や連帯保証債務がある場合は、この3カ月の期限を過ぎると、相続の放棄や限定承認ができなくなるため、要注意です。プラスの相続財産が多いと判断してしまい、3カ月以内の手続きを怠って「単純承認」をしてしまった後で、マイナスの財産があることが判明しても解決方法はないため、相続方法を決める前段階の財産調査は、きちんと行うことが大切です。

相続が発生した日以降、相続人が次の事項を行ってしまうと、「単純承認」をしたとみなされてしまう場合がありますので、ご注意ください。

  • 相続人が、相続財産の全部または一部を処分してしまった場合。
  • 相続人が限定承認および相続放棄をしたとしても、財産の全部または一部を隠匿したり、悪意である財産を財産目録に記載しなかった場合。 (641)

相続の承認と放棄

遺産相続というと、プラスの財産(資産)だけが相続人に継承されるように思えますが、実は、それだけではなく、マイナスの財産(負債)も相続人に継承されることになります。日本において相続という避けられない事情で負債まで背負ってしまうのでは、相続人に酷です。そこで、相続人には、遺産相続を受け入れるか、受け入れないかの選択権が認められています。相続するという意思表示を「相続の承認」といい、相続しないという意思表示を「相続放棄」といいます。相続人にはこの相続を承認するか放棄するかという選択権が認められているのです。

相続の承認には、「単純承認」と「限定承認」があります。単純承認とは、負債を含めて遺産相続の全部を受け入れるという意思表示であり、被相続人の一切の権利義務を「無限に」継承することになるため、プラスの財産(資産)だけでなく、マイナスの財産(負債)もすべてそのまま受け継ぎます。限定承認とは、相続財産の中から負債を支払って、それでも財産が残っていれば相続するという留保付きの相続の承認のことであり、財産の範囲内に限定して債務を負担します。

限定承認または相続放棄を選択するには、相続開始から3ヵ月以内に家庭裁判所へ届け出なければなりません。この3ヵ月の期間を過ぎると単純承認したものとして扱われます。(640)

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