税金申告の期限延長

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、税金申告にも及んでいます。連邦個人所得税の申告書の提出期限および税金納付期限が3か月間延長されて7月15日に決定となりました。通常、期限を延長するには、延長申請書を提出すると同時に税金の納付を行う必要があります。この度の延長はそれとは異なり、延長申請書を提出する必要は全くなく、従来の提出期限日である4月15日から3か月超えて申告書を提出したり、税金の支払いを行ったとしても、ペナルティーと利息が加算される心配はありません。

延長された7月15日をオリジナル申告書提出期限日とするのは、個人所得税ばかりでなく、法人税や贈与税、信託などの申告書にも適用されます。また、各州税上の適用については、本校執筆時点で定かではありません。(NY州は連邦税に従います。)なお、日本の個人所得税の申告書提出期限日は、従来の3月15日から1か月後の4月16日に延長となりました。(757)

居住州と勤務州が異なる場合

居住している州と勤務している州が異なる場合、通常、居住州と勤務州の双方で所得税の申告を必要とします。それぞれの州において居住者・非居住者のどちらの身分形態で申告すべきかが問題になります。州の居住者・非居住者の定義は、連邦税法上の定義と異なります。連邦税法上、居住者となっても、州税法上、居住者になるとは限らないことにご注意ください。

勤務州には、非居住者の身分形態でその州源泉の収入(給与所得)を課税対象所得として報告し、計算した所得税を申告納税します。一方、居住州には、居住者の身分形態で連邦税法上報告した所得と同一の年間全所得を報告します。その際、勤務州で申告納税した税金について「他州税額控除」の形で控除を受けます。

他州税額控除は、勤務州の申告書上既に所得として報告して課税された税金によって、居住州の税金が相殺されて、二重課税の回避を達成するために設けられた州税計算上の仕組みです。連邦税法上、居住者の身分で全世界所得報告して申告納税する際、既に一度外国で課税された所得が含まれていると、外国税額控除の作用により二重課税の回避が認められます。他州税額控除は、この連邦税の外国税額控除の取り扱いに類似した規定です。(664)

州所得税

 

個人所得税は連邦政府だけでなく、州政府や一部の市政府によっても課税されます。連邦所得税と同様、各州が従業員の給与から源泉徴収税によって、そして自営業の所得に対する予定納税によって、税金をあらかじめ納付しておいて、1年に1度確定申告を行うことで精算をするという制度を採っています。50州のどの州にも所得税制があるわけではなく、アラスカ、フロリダ、ネバダ、サウスダコタ、テキサス、ワシントン、ワイオミングの7州には個人所得税制がありません。ニューハンプシャー、テネシー州の2州は、利子、配当、不動産や株式のキャピタルゲインなどの投資所得だけが課税対象となります。

州の居住者・非居住者の定義は連邦税法上の定義とは異なります。連邦税法上居住者となっても、州税法上も居住者となるとは限りません。連邦税上は非居住者扱いなのに、州税上は居住者として扱われることがあります。州税で課税対象となる所得は、おおむね連邦税の課税対象所得と同じと考えてよいでしょう。基礎控除や配偶者控除、扶養控除、項目別控除、概算額控除は、通常、適用範囲や金額が連邦税のものとは異なります。中には総所得課税を基本としている州もあります。申告書の提出期限は、ほとんどの州が連邦税と同じ4月15日ですが、ハワイ州の4月20日、バージニア州の5月1日というように異なる期限日を設けている州も6州あります。(553)

居住州と勤務州が異なる場合

居住している州と勤務している州が異なる場合、通常、居住州と勤務州の双方で所得税の申告を必要とします。それぞれの州において居住者・非居住者のどちらの身分形態で申告すべきかが問題になります。州の居住者・非居住者の定義は、連邦税法上の定義と異なります。連邦税法上、居住外国人となっても、州税法上、居住者になるとは限らないことにご注意ください。

勤務州には、非居住者の身分形態でその州源泉の収入(給与所得)を課税対象所得として報告し、計算した所得税を申告納税します。一方、居住州には、居住者の身分形態で連邦税法上報告した所得と同一の年間全所得を報告します。その際、勤務州で申告納税した税金について「他州税額控除」の形で控除を受けます。

他州税額控除は、勤務州の申告書上既に所得として報告して課税された税金によって、居住州の税金が相殺されて、二重課税の回避を達成するために設けられた州税計算上の仕組みです。連邦税法上、居住者の身分で全世界所得報告して申告納税する際、既に一度外国で課税された所得が含まれていると、外国税額控除の作用により二重課税の回避が認められます。他州税額控除は、この連邦税の外国税額控除の取り扱いに類似した規定です。(539)

 

在宅勤務者(テレコミューター)の税金問題 Telecommuter and State Tax

<在宅勤務者(テレコミューター)の税金問題 Telecommuter and State Tax>

従業員が会社に出勤せず、自宅にいながらにしてインターネットやスカイプなどで会社と連絡を取り合い、出勤従業員と同等の仕事を行う在宅勤務者のことをテレコミューターと呼びます。雇用主と従業員の双方にとって便利で重宝する勤務形態です。テレコミューターが居住する州と会社の所在州が同じである場合は、給与の源泉と州所得税の課税が同一州で行われるため税金の問題は生じません。州が異なる場合、法人税と個人所得税の問題が生じます。テレコミューターの他州における物理的存在は、会社が事業遂行のための拠点を他州内に有していることとなり、州法人税の申告・納税の問題が発生します。

州を越えるテレコミューターの動機が、会社の必要性からではなく本人の便宜のためである場合は、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルバニア、デラウエア、ネブラスカの各州の規定(2013年現在)の適用により、個人所得税の課税の問題が発生します。雇用主である会社のために在宅勤務を行った他州居住者は、本人が会社に毎日出勤して役務の提供を行って給与を得たことと同等と見なされます。すなわち、テレコミューターは会社の所在州での個人所得税の申告・納税を必要とします。居住州に所得税制がある場合は、他州税額控除の仕組みによって二重課税の回避が達成されます。在宅勤務の動機が会社側の便宜による場合は、役務の提供地である居住州での課税となります。(453)

海外在住者の州税問題 Foreign Address and State Tax

<海外在住者の州税問題 Foreign Address and State Tax>

米国で働いて所得を得ている人は、連邦IRSと州の税務署に所得税の申告書を提出します。米国外(例えば日本)に住み外国所得を得ている米国籍保持者および永住権保持者は、居住国での税金処理のほかに連邦所得税の申告義務あることは周知の通りです。外国に住んでいる納税者が遭遇する州税の問題について検討します。

永住権保持者は連邦税法上、居住外国人と定義されているため、米国に住んでいなくても米国の居住者として全世界所得を申告しなければなりません。州税法では、永住権を居住者の決定要件とする連邦税法の影響を受けることなく、主に滞在日数基準によって居住者または非居住者に分類されます。永住権保持者が日本に住んでいる場合は、州税法上は非居住者となり、州の源泉所得がない限り納税申告義務は生じません。日本での所得も、課税対象外であるため申告の必要がありません。

日本に住んでいる永住権保持者が提出する連邦所得税申告書上、米国の住所を記載している場合に州税の問題が生じることがあります。州の税務当局は、連邦税と州税の申告書の住所、氏名を照合して、申告不履行の摘発調査を行っています。州当局から、「州税申告書が提出されていないため、当方で把握している所得に基づいて税金とペナルティーを計算した。早急に対応をされたし。」との通知が送られてきます。米国に住んでいない場合は、州税務当局の誤解を招かないように、実際に住んでいる日本の住所を載せて、米国の住所は使わないことが勧められます。(433)

2州にまたがる納税 State Taxes

<二州にまたがる納税 State Taxes>

個人所得税は連邦政府だけでなく、州や市などの地方政府によっても課せられます。すべての州や市に所得税制があるわけではなく、なかには所得税が存在しない地方政府もあります。地方税の居住者・非居住者の定義は、連邦税法上の定義とは異なり、永住権保持者が必ず居住者になるとは限りません。ここでは、永住権を保持する夫婦が仕事の都合で二つの異なる州や国に別れて住んでいる場合、税務申告がどのようになるのか考えてみます。

二つの州または二つの国に別れて住んでいる夫婦の双方が永住権保持者であれば、連邦税については「夫婦合算申告」(ジョイント・リターン)または「夫婦個別申告」(セパレート・リターン)のうち、いずれか都合のいい方法で申告します。連邦税の計算上「夫婦合算申告」で申告したとしても、夫と妻のそれぞれの居住州において居住者の身分で「夫婦個別申告」を適用して州税申告を行います。そうすることによって本人分の所得だけを報告して州税の計算ができるため、節税が達成できる場合が多くあります。「夫婦合算申告」を適用すると、他方の配偶者の他州源泉所得も含めて報告しなければなりません。そして、いたって煩雑な他州税額控除の計算もしなくてはならず、場合によっては税金がより多額に計算されて不利になることもあります。(432)

租税条約による免税所得と州税 Treaty Income and State Tax

<租税条約による免税所得と州税 Treaty Income and State Tax>

米国の所得税は連邦政府に加えて、州政府や一部の市政府や郡政府によっても課せられます。連邦税と同一の税制が州税や市税にも適用されるかというと、必ずしもそうではありません。例えば、居住者・非居住者の州税上の定義は、連邦税のそれとは異なります。日米租税条約の取り扱いも、連邦税と州税とでは大きく異なります。そのため、連邦税は税金が免除されるのに、州の所得税は支払いが生じる場合があります。

F、J、M、Qビザで大学に通う米国滞在者は、条約第19条の適用により教育または生計維持のために日本から受け取る給付や仕送りについて、米国での課税が免除されます。事業修習生は、ビザの種類に関係なく入国後1年以内に受け取る日本からの給付や報酬について、米国では免税となります(条約第19条)。教授や研究者は、教育機関における教育または研究のために受け取る報酬について、米国内での支払いも含めて米国入国から2年間、課税免除となります(条約第20条)。免税のため税金の支払いがない場合でも、免税の法的根拠と金額を開示する申告書の提出を必要とします。

租税条約の規定によって免税となるのは、原則として連邦税に限ります。日米租税条約は、アメリカ合衆国(連邦政府)と日本国との間で締結された国家間の取り決めであり、その適用は州法には及ばない場合があっ理ます。その場合、条約による免税所得は州所得税の対象となる可能性があります。(384)

海外に在住する永住権保持者の州税 State Taxation of Green Card Holder Abroad

<海外に在住する永住権保持者の州税 State Taxation of Green Card Holder Abroad>

グリーンカード(永住権)保持者は、米国市民と同等の扱いを受けて、米国内での滞在日数に関係なくたえず居住者となります。通常、米国に滞在する外国人は、「実質的滞在条件」の判定基準によって滞在日数が183日以上であれば居住者、183日未満であれば非居住者となりますが、永住権保持者はこの判定基準の適用外と定められています。グリーンカードを取得すると、たとえ一年中米国外に住んでいたとしても、居住者として年間の全所得を米国において申告する義務を負います。

海外在留に関する移民法上の問題は解決していると想定して、永住権保持者が日本に住所を移し日本の税法上の居住者となっても、永住権を放棄しない限り米国税法上も米国居住者として扱われます。いわゆる二重居住者として両国で居住者として税金申告を行います。既に日本で課税された所得を再び米国でも申告をすることによって生じる二重課税の問題は、海外役務所得控除と外国税額控除の適用によって解決する仕組みとなっています。

一時的に海外に居住する永住権保持者は、米国の申告書上の住所として海外の住所を記載して申告すべきです。その理由は、第一に、海外役務所得控除との整合性を証明するためであり、第二に、州の税務当局の申告・納税の要求に対して、州税上は非居住者として申告が不必要であることを立証するためです。(285)

海外所得と州所得税 State Tax and Oversea Income

<海外所得と州所得税 State Tax and Oversea Income>

個人所得税は、連邦政府(IRS)だけでなく、州政府や一部の市政府によっても課税されます。居住者や市民の身分で申告する場合、連邦税の計算上課税対象となる所得は、一部の例外を除いて州税上も課税対象となります。連邦税の申告所得の中に既に一度海外で課税された所得が含まれていると、「外国税額控除」の作用によって国際間の二重課税の回避が達成できます。外国税額控除が、州税の計算上も認められればいいのですが、そうでないことが問題です。

勤務している州と居住している州が異なり二州以上と関わりを有する納税者は、通常、勤務州には非居住者の身分でその州の給与所得だけを申告し、居住州には居住者の身分で連邦税で報告したものと同じ年間全所得を申告します。その際、勤務州で支払った税金は、「他州税額控除」の形で居住州の税金から差し引かれて二重課税が回避されます。この州税計算上の他州税額控除は、連邦税の外国税額控除の仕組みに類似してはいるものの、国際間の二重課税の問題解決の役目を果たすことができません。米国内の州の間の二重課税は解決しますが、外国税の支払いに対する救済には役立たないのです。

以上を踏まえて注意しなければならないのは、予定納税の計算の際、外国税額控除によって連邦税の支払いの必要はないと予測されても、州税の追加納付が必要であることを確認して、予納過少納付のペナルティーが課せられないようにすることです。(272)

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