ソーシャル・セキュリティー社会保障税

米国で働いて給与や自営業報酬を受け取る人は、連邦社会保障制度のソーシャル・セキュリティー(SS)税とメディケア税を納めています。この二つの税金を社会保障税と呼びます。社会保障税を納めてきた人は、将来引退後SS手当てを受け取ることができます。

給与所得者は、給与が支給される度に連邦所得税と州所得税のほかに、社会保障税が給与から源泉徴収されます。会社は、従業員から源泉徴収した社会保障税と同額を雇用主負担分として加え、その合計額をIRS(内国歳入庁)宛に納付します。給与所得と源泉徴収税は、会社が年末に発行するフォームW-2でその内訳を知ることができます。自営業者は、自営業税と呼ばれる社会保障税を、連邦・州所得税と共に予定納税の形で、全額自分で負担してIRSへ払い込みます。

SS税の税率は、従業員6.2%、雇用主6.2%、合計12.4%です。メディケア税の税率は、従業員1.45%、雇用主1.45%、合計2.9%です。自営業者は、SS税12.4%、メディケア税2.9%で計算した社会保障税の全額を自分で負担します。SS税の年間課税対象最高税がインフレ調整によって毎年定められ、2018年12万8400ドル、2019年13万2900ドルです。メディケア税については上限額は定められず、給与の全額が課税対象となります。給与、報酬が20万ドル超の金額に対して追加メディケア税として0.9%の税金が課せられます。(714)

非課税住居売却益と使用目的条件

 

主たる住居の売却益(譲渡益)について、独身25万ドル、夫婦合算申告50万ドルの非課税措置の恩恵を受けるためには、①2年間の所有条件、②2年間の居住条件、③使用目的条件を同時に満たす必要があります。①所有条件は納税者が住居の所有権を有すること、②居住条件は主たる住居として納税者が実際に日常的にその家に住んでいること、③使用目的条件は、主たる住居としての適格使用をいいます。非適格使用があった場合は、25万ドル・50万ドルの非課税額は制限されて満額認められず課税されます。非適格使用とは、主たる住居使用以外の休暇や賃貸目的使用のことを指します。

(例)独身Aさんは、2017年1月1日に30万ドルで住居を購入して、賃貸(非適格使用)のために3年間使用しました。2020年1月1日、その家に移り住み「主たる住居」(適格使用)として2年間使用しました。2022年1月1日、その住居を60万ドルで売却し、30万ドルの譲渡益をを得ましたが、2年間の「所有条件」および「居住条件」を満たしてはいるものの、所有していた5年間のうち3年間は主たる住居以外の非適格使用であるため、譲渡益のうち18万ドル(60%)は課税対象の譲渡益となり、残りの12万ドル(40%)だけが非課税扱いとなります。 (712)

 

親からの仕送りと贈与税

米国在住者が日本の親から生活費や教育費のための仕送りを受けた場合の課税について検討します。親子や兄弟姉妹、夫婦などの間で支払われる仕送りや送金を、生活費・教育費として受け取った場合は、日本、アメリカとも贈与 税の対象となりません。仕送りをする側が子、仕送りを受ける側が親の場合も課税されません。

生活費とは、家賃、水道光熱費、食費、養育費、治療費などの通常の日常生活を営むのに必要な費用のことをいいます。教育費とは、子や孫の学資、教材費、文具費、交通費などの義務教育費に限らず、教育上通常必要と認められるものをいいます。援助を受けた者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲の財産を指します。いくらが常識的な範囲かというのは、その家庭の生活水準や仕送りをする側、される側の生活状況によっても判断が変わってきます。

仕送りが生活費又は教育費に充てられず、預貯金となっている場合、株式や住居の購入に充てられた場合のように、生活費・教育費に充てられなかった部分については贈与税の課税対象となります。婚姻に当たって子が親から受けた金品、親が負担した子の結婚式および披露宴の費用なども、贈与税の課税対象にはなりません。社会通念上相当と認められる範囲内のものに限ります。(711)

予定納税の過少納付加算税

 

所得税は、源泉徴収または予定納税によって年内に概算額を払い込んでおいて、年明けの確定申告時に過不足の金額を計算して税金の精算を行います。源泉徴収とは、毎月の給与支給のたびに給与から差し引かれた税金を雇用主が内国歳入庁(IRS)へ納める制度のことです。予定納税とは、給与以外の自営業事業所得や利子、配当、譲渡所得などにかかる税金を、納税者が年内に4分割して四半期ごとにIRSへ払い込む制度のことです。

源泉徴収や予定納税により前もって納められた金額が、確定税額(確定申告書で計算された税金額)と比べて1000ドル超不足していると、予定納税の過少納付加算税というペナルティーが課せられます。ただし1000ドル超の不足額があっても、年度内の源泉徴収および予定納税による納付額が確定税額の90%以上であれば、ペナルティーは生じません。年度終了前に確定税額を的確に予測するのは極めて困難である事実を考慮して、IRSは予定納税の安全圏規定(セーフハーバー・ルール)を定めています。すなわち、前年度の確定税額の100%(夫婦合算申告の調整総所得が15万ドル超は110%)以上を年内適時に納付してあれば、たとえ不足額が多額であったとしてもペナルティーを確実に回避できるという規定です。

なお、過少納付加算税ペナルティーの計算には、3か月ごとにIRSによって公表される延滞利息・還付金利息のための法定利率(2019年第1四半期は6%)が使われます。(710)

申告書の提出期限延長

 

出張などのため期限日までに税金申告ができない場合、申請によって提出期限の延長が認められます。延長申請時の税金納付は次の3種類の方法から一つを選びます。①フォーム4868に必要事項を記入し、小切手を同封して4月15日までに郵送提出する(申請書に本人のサインは求められない)。②Direct Payまたはクレジットカード・デビットカードで追加税金払い込む。③パソコンを使ってe-file する(この方法は特定のソフトウエアを購入する必要がある)。申請によって6ヶ月間、10月15日まで提出期限が延長されます。

延長申請によって認められるのは申告書の提出期限の延長であって、税金納付の延長でありません。税金不足分は延長申請時に上記3種類の方法のうちの一つで支払わなければなりません。確定申告書の提出時に確定税額とそれまでの納付額とを比べて税金の精算をします。税金過払いのため還付金を受け取ることになる場合は問題ありませんが、納税不足のため追加納付になる場合は延滞利息と、ことによってはペナルティーが課されます。利率はIRSが3ヶ月ごとに公表するレートを適用します。2018年と2019年のIRS利率は年率4%です。税金不足分が確定申告額の10%を超えた場合には、延滞利息に加えて遅延納付ペナルティーが課されます。ペナルティーは税金滞納1ヵ月につき0・5%、ただし最高25%です。州税についても期限延長申請の必要がある場合があります。(709)

キャピタル・ロス(譲渡損)の繰延控除

 

株やミューチュアル・ファンド、債券など投資目的で購入して保有していた資産を売却した場合、取得費よりも高い値段で売却した場合に譲渡益(キャピタル・ゲイン)が、取得費よりも低い値段で売却した場合に譲渡損(キャピタル・ロス)が発生します。購入してから売却するまでの保有期間が1年超の長期キャピタル・ゲインは最高20%の優遇税率が適用されます。保有期間が1年以下の短期キャピタル・ゲインは通常の所得税率が適用されます。キャピタル・ロスは控除が認められます。

キャピタル・ロスを控除する際、一定の順序を守らなければなりません。キャピタル・ロスは、キャピタル・ゲインと相殺します。相殺後に長期キャピタル・ゲインが残れば、前述の20%の優遇税率を適用して税金を計算します。相殺後に短期キャピタル・ゲインが残っていれば、その金額は他のすべての所得と合算して、通常の所得税率(10%~37%の累進税率)が適用されます。 キャピタル・ゲインよりキャピタル・ロスの方が多く、相殺後にロスが残った場合は、給与、利子、配当、事業所得などの通常所得と相殺できます。ただし、1年間に最高3000ドル(夫婦個別申告は1500ドル)が相殺控除の限度額となっています。 相殺控除後、まだキャピタル・ロスが残った場合は、翌年に繰り延べられ、キャピタル・ゲインや通常所得との相殺控除が可能です。繰り延べ年数は、キャピタル・ロスが相殺控除によって無くなるまで無期限です。 (706)

違法就労所得の税金

税法上、合法就労所得と違法就労所得には区別は付けられておらず、IRSはすべての所得を申告して税金を納めることを奨励しています。所得が雇用主の簿外取引の支払いであるためフォームW-2やフォーム1099などの調書が発行されなくても、調書が発行されたならば記載される金額を申告書に報告する義務があります。合法時に取得したソーシャルセキュリティー番号があれば、その番号を使います。番号を持っていない場合は、個人納税者番号(ITIN)を申請取得して使います。ITINで申告する場合は、社会保障制度への加入は許されず、ソーシャルセキュリティー税とメディケア税の支払いをする必要はありません。

違法就労者は、税務申告書上の報告内容が手がかりとなって移民局による手入れにつながるのではないかとの懸念を持つでしょう。しかし、連邦税法上、納税者が税務申告書で報告した情報を、刑法犯罪に関与している場合を除いて、国土安全保障省(移民局)を含む政府の他機関へIRSが提供することは禁じられています(内国歳入法7213条)。従って税務申告書から違法滞在者が摘発されたり強制送還されたりすることはありません。IRSにとっては、すべての所得にかかる税金を徴収することの方が重要課題だからです。(705)

2018年の控除方式の選択にはご注意ください

納税者は、2種類の控除方式(概算額控除と項目別控除)のうち一方式を選択して税金の計算を行います。

概算額控除(Standard Deduction) は、標準控除、定額控除と翻訳されることもあります。具体的な経費項目をあげずに、一定概算額による控除が認められるという簡便方式です。2018年の控除額は、夫婦合算申告2万4000ドル、特定世帯主1万8000ドル、独身・夫婦個別申告1万2000ドルです。65歳以上の高齢者の場合、既婚者一人1300ドル、独身1600ドルの追加控除が認められます。概算額控除は、経費の証拠書類がなくても一定額の控除が取れるので、いたって便利です。しかし、この控除方式を選択できるのは、アメリカ市民または一年中アメリカに滞在していた居住外国人に限ります。非居住外国人や二重身分の外国人の場合は、概算額控除の採用は認められず、必ず項目別控除を適用しなければなりません。

項目別控除(Itemized Deductions)は、個別控除と呼ばれることもあります。個人消費生活に関わる経費の内、税法上認められているものを項目別に並べて、その合計額を控除する方式です。

トランプ税制の大幅な制限・削減により2018年の控除項目は2017年までと大きく異なることにご注意ください。(703)

項目別控除(Itemized Deductions)が節税になるとは限らない

住宅所有者は、税金計算上貸家住まいと比べて、固定資産税と住宅ローン支払利子の減税効果のある控除が認められて優遇されてきました。ところがトランプ大統領の税制改正が制定され、2018年以降、諸税金控除による優遇措置に歯止めがかかることになりました。諸税金とは、州・市の所得税と固定資産税の合計額をいいますが、諸税金額に対して、1万ドル(既婚者個別申告は5000ドル)の上限額が設定されました。

 納税者は、項目別控除あるいは概算額控除のうち、いずれか有利な控除方式を選択して税金を計算することができます。概算額控除を選択できるのは、米国市民である場合、または、一年中を通じて居住外国人であった場合に限ります。控除の制限が施されたことにより、大概の場合項目別控除の方が有利となるという従来の考え方は改められることになります。

(例)既婚者Aさんは、控除方式として概算額控除(2018年2万ドル)と項目別控除のどちらを選択したら有利となるか計算します。A さんは、固定資産税1万5000ドル、州・市所得税1万ドル、住宅ローン支払利子9000ドルを支出したとします。2017年までは、諸税金の合計額2万5000ドルと支払利子9000ドルの総合計3万4000ドルが項目別控除として認められていました。2018年以降は、諸税金控除の上限額が1万ドルに抑えられ、その額に住宅ローン支払利子9000ドルを加えた1万9000ドルが項目別控除額となります。Aさんは、控除方式として項目別控除(1万9000ドル)ではなく概算額控除(2万ドル)を選択することにより節税となり、有利となります。(702)

 

修正申告

 

申告書を提出した後、計算の間違えや収入の申告漏れに気付いた場合は、修正申告書(フォーム1040X)に変更項目の詳細説明を記入し、IRS(内国歳入庁)に報告して追加税金と延滞利息を支払う義務があります。修正申告書には収入の申告漏ればかりでなく、経費控除、申告資格(Filing Status)などの変更も報告します。また、過払税金の還付請求にも使われます。

銀行や役務提供先などから収入の支払調書フォーム1099が発行されていたのにもかかわらず、申告を怠っていた場合、後日IRSから所得の申告漏れにより追徴税が発生したことを記述した通知書が送られてきます。通知書が正しければ、追徴税を支払います。通知書が間違いであれば、その説明や根拠の提出を求められます。

IRSの通知書は必要経費の控除を無視して収入だけで税金を計算します。例えば、株や債券、ミューチュアル・ファンドの売却のフォーム1099-Bをうっかり申告していなかった場合、IRS通知書は取得費を全く考慮せずに税金の売却価格だけで計算をするため、追徴税の金額は驚く程高額になります。この場合には、IRSへ取得費や必要経費の控除が認められる旨を、早急に文書で伝え、必要に応じて修正申告書を作成します。売却価格が取得費を超えている場合は、キャピタル・ゲインが発生し追加税金になりますが、売却価格が取得費よりも低い金額の場合には、キャピタル・ロスとなり税金が還付されます。(698)

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