個人納税者番号(ITIN)

ソーシャルセキュリティー・ナンバー(SSN)は、国民一人ひとりに割り当てられた9桁からなる社会保障制度の整理番号です。SSNは、雇用、源泉徴収、銀行口座、債券投資、不動産売買など、あらゆる税金関係の取引管理や身分証明目的に役立っていて、納税者番号としての機能も果たしています。米国籍保持者は誕生時からSSNを保有していますが、外国人の場合SSNを取得できるのは、永住権保持者および労働許可のある合法ビザ保持者に限られます。

 

申請書類の提出先は所定のIRSです。税金上の要件が整えば、移民法上の身分に関係なく、合法ビザがなくてもITINを取得できます。申請後約6週間でITINが発行され、確定申告書が受理されます。翌年以降、確定申告書にそのITINを記載して提出します。(505)

税金申告の期限延長

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、税金申告にも及んでいます。連邦個人所得税の申告書の提出期限および税金納付期限が3か月間延長されて7月15日に決定となりました。通常、期限を延長するには、延長申請書を提出すると同時に税金の納付を行う必要があります。この度の延長はそれとは異なり、延長申請書を提出する必要は全くなく、従来の提出期限日である4月15日から3か月超えて申告書を提出したり、税金の支払いを行ったとしても、ペナルティーと利息が加算される心配はありません。

延長された7月15日をオリジナル申告書提出期限日とするのは、個人所得税ばかりでなく、法人税や贈与税、信託などの申告書にも適用されます。また、各州税上の適用については、本校執筆時点で定かではありません。(NY州は連邦税に従います。)なお、日本の個人所得税の申告書提出期限日は、従来の3月15日から1か月後の4月16日に延長となりました。(757)

現地法人子会社

 

米国に進出して事業展開をする日本企業にとって、現地法人子会社は駐在員事務所や支店と比べて、より踏み込んだ進出形態です。株主である日本の親会社から分離独立した租税主体であり、帳簿に計上する全所得が連邦および州の法人税の対象となります。米国内に日本とは別個の組織である現地法人を設立し、その組織を通じて米国内において商活動に従事します。資金提供者である株主(親会社)と経営陣である役員・取締役によって事業運営を行い(所有と経営の分離の原則)、株主は出資株式引受額までの責任を負います〈株主有限責任の原則〉。個人事業主および一般パートナーが無限責任を負うことと対照的です。

現地法人は、株主から分離独立した租税主体として扱われ、組織の所得計算を毎年行い、法人所得税を毎年支払う必要があります。現地法人子会社の年間全所得が法人所得税の課税対象となります。すなわち、帳簿上の純利益に一定の調整を施した金額を、連邦法人税および州法人税の課税所得とします。

現地法人は連邦政府の法律によって設立するのではなく、米国50州およびワシントンDCの会社法に基づいて設立します。事前に、商号(会社の名称)、授権株式数、額面金額,取締役会の構成員氏名などを決め、弁護士に依頼して基本定款および付属定款を作成します。定款を州務長官に提出して認可を得ます。(755)

 

日本企業の米国内支店

 

日本企業の米国への進出形態の一つに支店による展開があります。駐在員事務所が準備的・補助的活動を行うのに対して、支店は、販売促進活動、保証役務提供、資金の運用・調達、本社製品の維持、アフターケアー・サービス、修理などの営業行為を行います。日本企業は支店を通じて米国において直接的に事業活動に従事できます。

支店は、日米租税条約第5条に言及されているPE〈恒久的施設〉であり、事業を行う一定の場所に該当するため、連邦法人所得税の課税対象となります。また、内国歳入法第882条でも、米国内商活動に実質的関連のある外国企業は連邦所得法人税が課されるとしています。

連邦法人所得税の課税の範囲はPEに帰せられる利益であり、米国内の支店と実質的に関連のある所得に限定されます。一般に、支店の純利益および課税所得は、内国歳入法の純利益および課税所得とおおむね同じ方法で計算されます。すなわち、支店に帰属するすべての米国源泉所得と外国源泉所得から必要経費を差し引いた金額が課税所得となります。

外国法人の様式であるフォーム1120Fで連邦法人所得税の申告・納税を行います。(754)

駐在員事務所

駐在員事務所は、アメリカへの進出を計画している外国企業(日本企業)の最も初期の段階の形態です。駐在員事務所は、連邦法人税の対象となりません。その法的根拠は、日米租税条約第5条にあります。租税条約はアメリカ合衆国(連邦政府)と日本国との間で結ばれた国家間の取り決めであり、その適用は州法には及ばないため、駐在員事務所は州法人税の対象となります。日米租税条約第5条は、日本企業がアメリカ国内に、事業を行う一定の場所である恒久的施設(PE)、すなわち支店、を有する場合に、連邦法人税の課税が生じる旨定めています。

次の活動はPEの例外とされ、米国における事業活動と見なされないことになっています。①商品の保管・展示。②他の企業による商品の加工。③商品の購入。④情報の収集。⑤その他の準備的・補助的活動。⑥上記活動を組み合わせた活動。

市場調査、立地調査、情報収集・提供などの準備的・補助的活動であればPEとは見なされず、連邦法人税の対象にはなりません。仲立人・問屋・その他の独立代理人を通じて行う業務はPEとは見なされませんが、企業に代わって行動するそれらの者が、米国内で企業の名において契約の締結を反復行使する権限を有する場合にはPEと見なされます。(753)

国境を越えて活動する芸能人・スポーツ選手の税務

日米間の国境を越えて活動する芸能人およびスポーツ選手(芸能人等)の税務については、日米租税条約第16条が規定しています。 国境を越えて公演や競技などの個人的活動を行う日本からの芸能人等は、原則、活動が行われた源泉地国(米国)で課税されます。ただし、年間の滞在日数に関わらず、芸能人等としての活動から得る所得が1万ドル以下の場合は、源泉地国での課税は免除され、1万ドル超の場合にだけ課税されます。すなわち、米国における公演・競技等による総収入額が1万ドルを超えない芸能人等については、米国での課税は免除となります。1万ドルを超えると、所得の総額に対して米国で課税されます。米国で課税されてもされなくても、日本の居住者として日本での課税が生じます。

芸能人等の活動に対する報酬が、個人に対して支払われるのではなく芸能法人等に支払われると、芸能法人等が源泉地国での課税の対象となる場合と、対象とならない場合とがあります。それは、外国法人の課税・非課税を決定する要件である恒久的施設の例外的適用によるためです。(750)

年金にかかる税金

税法上、米国居住者が日本から受け取る退職年金その他これに類する国民年金、厚生年金、保険年金などの給付金に対しては、本人の居住国である米国においてのみ課税を受けることになっています〈日米租税条約第17条〉。同様に、日本居住者が米国から受け取るソーシャル・セキュリティー手当、ペンション・プラン、その他の給付金は、本人の居住国日本においてのみ課税されます。退職年金とは、過去の勤務に関連し、提供した役務に対する対価として、または受けた障害に対する補償として退職後または死後に行われる定期的給付をいいます。具体的には日米双方の国でそれぞれの国内法に基づいて支給される公的年金を意味しています。また保険年金とは、過去の役務提供の対価ではないが、適正かつ十分な対価に応ずる給付を行う義務に従い、終身または特定の期間中に定期的に支払われる所定の金額のことをいいます。

年金給付を海外に送る際、日本では20%、米国では30%の源泉徴収税を差し引かれる場合があります。源泉徴収を回避するためには、然るべき申請をしておく必要があります。間違えて源泉徴収された税金は、確定申告をして還付請求することにより還付されます。(748)

海外金融資産の報告  Report of Foreign Bank Accounts

 

米国国外の金融機関に一定金額以上の銀行口座や証券投資口座を保有している納税者は、毎年報告書を当局に提出する義務があります。財務省用とIRS(内国歳入庁)用の二種類のフォームがあり、保有している金融資産の金額によって両方とも提出を必要とする場合と、片方だけで済む場合とがあります。米国籍保持者および居住外国人が報告書の提出義務を負い、非居住外国人は提出の必要がありません。申告不履行、遅延に対する多額のペナルティーが定められています。

 

財務省フォーム114――海外金融資産の年度内の合計最高残高が1万ドルを超えた場合に報告義務が生じます。記入事項は、申告者の氏名、生年月日、法人の場合その名称、納税者番号、住所、金融資産の種類、年度内の最高残高、金融機関名、支店の住所、口座番号、署名権のある口座の明細です。提出期限は暦年終了後の6月30日、ただし間に合わない場合は自動延長により10月15日でも可。電子申告による報告書提出が義務付けられていて、提出先は財務省。

 

IRSフォーム8938――報告義務が生じる残高は、申告資格ごとに定められていて、例えば独身は年度末5万ドル、年度内7万5000ドル、夫婦合算申告は独身の倍額です。記入事項は上記財務省フォームとほぼ同じですが、さらに利子、配当、譲渡益等の確定申告書上の金額、報告箇所、米ドルへの換算レートの情報を聞かれます。確定申告書に添付提出します。従って、提出期限は4月15日(延長可)であり、提出先はIRSです。(747)

独立して個人事業を始めた場合

会社の従業員としてではなく、個人で事業を行って得た所得や、フリーランスとして仕事を請け負って得た所得は、事業所得として扱われます。自営業収入から関連するすべての必要経費を差し引いて純利益または純損失(これを事業所得と呼びます)を計算して税金のスケジュールCに記入し、申告書フォーム1040(テンフォーティー)に添付提出します。会社勤めをしながら副業として自営業収入がある場合も同様にスケジュールCを必要とします。給与所得だけの場合と比べて、収入の申告漏れ、そして経費については証拠不備の疑いのため、税務調査の対象となる頻度がはるかに多く、普段から詳細な収入と支出の帳簿を維持しておく必要があります。

自営業の事業所得が給与所得者の給与所得に相当します。事業所得に給与、利子、配当、キャピタルなど、他のすべての所得を加えて総所得を算出し、その金額から所得調整控除を差し引いて調整総所得を計算します。その金額から、給与所得者の場合と同じ諸控除、すなわち項目別控除または概算額控除を差し引いて課税所得を算出し、

10%~37%までの7段階の税率を適用して所得税を計算します。

自営業税とはソーシャル・セキュリティー税とメディケア税のことで、事業所得に15.3%の税率を掛け合わせて計算します。自営業者は所得税に加えて、この自営業税をIRSへ払い込む義務があります。(741)

予納過少納付ペナルティーの回避

所得税は、源泉徴収や予定納税によって年内に税金の概算額を払い込んでおいて、年明けに確定申告を行って税金の過不足調整をして精算します。源泉徴収とは給与から税金を天引する制度のことであり、予定納税とは自営業事業所得や投資所得などにかかる税金を納税者が四半期ごと4分割してIRSへ払い込む制度のことです。源泉徴収によって税金を納めている給与所得者であっても、投資所得を相当額受け取る場合は、予定納税が必要です。

年内に納付してきた源泉徴収および予定納税による税金の払い込み額が、確定税額(確定申告書で計算される税金額)の90%未満であり、1000ドル以上の不足額となる場合、予納過少納付ペナルティー(Penalty for Underpayment of Estimated Tax)が課せられます。前年度と比べて所得が大幅に増加した場合や、上半期に比べて下半期にかなり多額の収入を得た場合などは、源泉徴収や予定納税が足りずにこのペナルティーの対象となる確立が高いため要注意です。ペナルティーは四半期ごとにIRSによって発表される利率(2019年第4四半期は年率5%)が適用されて計算します。(739)

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